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夏の休日

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「プロイセン君、もう遅い時間ですから、そんなに呼び鈴を鳴らさない方が…」

「あー?平気、平気!おーいヴェストー!お兄様のお帰りだぞー!」
日本の心配を余所にホロ酔いでゴキゲンのプロイセンはピンポンラリーを続ける。

「休日に休まないのは法律違反だぞー!お兄様が説教してやるから出てこーい!」

「そうだそうだ!今日はお兄さんの誕生日だってのにパーティーに顔も出さないなんて可愛くないぞー」
同じく酔っぱらってゴキゲンのフランスが、後ろからプロイセンの援護発言をした。
その横には、輪を掛けて酔っ払いのイギリスと、それを眺めてキャッキャと笑うアメリカ。

やはり、止めるべきでしたね…。
日本は眉間を押さえつつ、深いため息を吐いた。

ドイツさんとイタリア君が二人揃ってフランスさんの誕生日パーティにいらっしゃらないのは確かに心配でしたが、この状態の皆さんがここに来るのはなんとか止めるべきでした。
ドイツさん、申し訳ない…。

友人への深い謝罪の念を心の中で呟く日本の耳に、ガチャリとドアの開く音が入ってきた。

「お前寝てたのかよ、ドア開けんのおっせーなぁ 呑みなおすからビール用意しろビール!」
陽気なプロイセンの声の向こう側に、その声と真逆のテンションのドイツの顔が見えた。

こ、これは!これはいけないっ

エアリーディングマスター日本には、ドイツの発するどどめ色のオーラが、ハッキリと見えた。
「プロイセン君!退いて下さ…」
日本が叫び終わる前に、夏の夜空にドイツの怒号が轟いた。

「こぉのぉおお!クソ兄貴がー!!!!!」

「うぎゃぁああ!なにすんだこのクソ弟がぁあああああ!」
兄弟喧嘩というにはあまりにも凄まじい大乱闘を繰り広げる二人の後ろから、イタリアが飛び出してきた。

「うわぁ!ドイツもプロイセンもやめてぇええ!」

「…イタリア…くん?」

「日本!ふたりを止めて!うぇえええ」

「いや…その前にまず服を着て下さいお願いですからっ!」

全裸にシャツを羽織っただけの姿、そのうえ髪はびしょ濡れという風体のイタリアに、日本は目のやり場に窮しながら訊ねた。
「一体、お二人は何をなさってたんですか?フランスさんのパーティにいらっしゃらないので、つい心配で来てしまったのですが」

「え?あ、そーだ!さっき電話もらったときに言えなかったんだー、兄ちゃんお誕生日おめでとう!」
手を振るイタリアに、フランスは、『ありがとう!ケツ見えてるよケツ』と、ほがらかに笑いながら手を振り返した。

「電話もらって、兄ちゃんちに行こうと思ったんだけど、ドイツの庭仕事手伝うことになってね、それでそのあと公園でサッカーして、ジェラート食べて、ドイツんちに戻って来て一緒におふ…ふがっ」
乱闘中だったドイツが光の速さでイタリアの口を塞ぎ、ヒョイと持ち上げた。

「フランス、すまなかったな。俺としたことが、うっかりしていた。後日改めて誕生祝いはさせてもらう。日本にも心配を掛けてすまなかった。なにも案ずる事はないので安心してくれ。今日はもう遅いので、これで失礼させてもらう。兄貴が迷惑を掛けた事もすまなかった。」
では、とドイツは右肩にイタリアを担ぎ、左手でプロイセンを引き摺りながらドアの中へと消えて行った。

「なんだよもー!ここで呑みなおそうと思ってたのに。しょうがねーなぁ、じゃぁ他のとこ行こうぜー!」
お気楽酔っ払いのフランスとイギリスは意気投合し、軽い足取りで歩きだした。

「日本、キミも行くだろう?」
アメリカの声に、しかし日本は珍しく賛同しなかった。

「…いえ、アメリカさん。大変申し訳ありませんが、大切な用事を思い出しましたので、私はここで御いとまさせて頂きます。」
言うが早いか、老体とは思えない早さで日本はその場から駆けて行ってしまった。

「えー!?なんだって?大切な用事ってなんなんだーい日本―!」
アメリカの問いに、宵闇の中から、遠く日本の声が返ってきて消えた。

「お盆までに、終わらせなければならない仕事なんでー…す」



夏も終わりに近づいたある日、イタリアとドイツは日本から届いた手紙を読みながら、赤飯を食べていた。


前略                                                 
ドイツさん、イタリア君、お元気でお過ごしでしょうか。
先日は、夜分にお騒がせしてしまい誠に申し訳ありませんでした。
御二人の仲睦まじき様子を拝見し、私は創作意欲に満ちた夏の休日を過ごさせて頂くことが出来ました。
心より、御礼申し上げます。
御二人の今後永きに亘る幸せを祝して、日本の慶事での伝統食、赤飯をお送りさせて頂きます。御口に合えば幸いです。                                                           草々
                                         

「そういえば、俺たちのこと、まだ日本に話してなかったねー」

「そうだな、近いうちに二人で報告に行かねばならんな」
少し照れ笑いを浮かべるドイツに、イタリアは、おいしー!と赤飯を頬張りながらニッコリ頷いた。

「しかし…」
ドイツは、もう一度手紙に目を通しながら首を傾げた。

「創作意欲とは…、日本はこの夏、一体何を創っていたのだろうか?」

遡ること十数日前、日本の関東某所で行われた夏の恒例イベントにて、日本が幸せそうに輝く汗を流しながら書物を販売していた事を、二人はまだ知る由もなかった。
作品名:夏の休日 作家名:スープ