食文化
「…wow…」
アメリカの青い瞳が、驚きに見開かれている。
「…もしかして、お口に合いませんでしたか?」
日本が不安そうに眉を寄せ、アメリカを見やる。
しかしおろおろする日本など見えてすらいないかのように、アメリカはガツガツと料理を口に運んでいた。
ああよかった。
日本は安堵する。
どうやら口に合わなかったわけではないらしい。
それどころか、ずいぶん気に入ってもらえたようだ。
詰めていた息を小さく吐き出して、日本もスプーンを手に取った。
「日本、日本! 君の家の料理はすごいよ!! これって本当にびっくりするほどおいしいんだぞ」
食べる前は地獄の拷問のように思えたそれは、口に入れた瞬間天使の祝福に変わった。
ピリリとスパイシーで、けれどもただ辛いだけでなく野菜や肉の旨味だとか濃厚なこくだとか、ひどく複雑で繊細な味のソースと米の甘味が絡みあう。
アメリカは言葉を発する間も惜しいというように、ソースを野菜や米と絡めては口に運ぶ。
その様子をみて日本が幸せそうに目を細めるので、アメリカも自然笑顔になった。
空になった皿。
アメリカは膨れたお腹をさすりながら日本に問いかける。
「本当においしかったよ。ねえ、これってなんていう料理なんだい?」
日本はデザートの梨をむきながら答える。
「カレーライスと言います。私の国で3本の指に入るほど人気のメニューなんですよ」
そんなにお気に召したのならまた作りますね、と日本。
伏せたスプーンに2人分の笑顔が映った。