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葎@ついったー
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die vier Jahreszeite 004

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004




「…冗談じゃねぇぞ」

思わず呻くような声が出た。
12月24日。巷はクリスマス・イヴだと浮かれ騒ぐ昼過ぎのこと。
俺はアパートの駐輪場でぺしゃんこになった自転車のタイヤに腹立ち紛れに蹴りを入れていた。

黒の油性マジックで「俺様一号」と書かれた自転車は主に俺の足だった。
学校へ行くのもバイトに行くのも買い物に行くのもいつもこれ。
それなのに,そのタイヤが今日になってパンクしているとか,マジでありえねぇし。
昨日は平気だったはずなのに,と苛立ちながら後ろのタイヤをぐるりと回すと,今時滅多に見かけなくなった画鋲,しかも錆びたヤツがぶっすりと刺さっているのが目に入った。
うーわ,サイアク。

喉で罵ったって画鋲は抜けない。抜けたところで空いた穴は塞がらない。
俺は深々とため息を吐くと立ち上がって歩き出した。

空はどんよりと曇っている。
今にも雪が振ってきそうな分厚い雲。
そういえば休み前にフランシスとアントーニョのヤツが「今年はホワイト・クリスマスになるかも☆」なんて云ってやがったっけ。

数日前のやりとりを思い出すと途端に胸にぶす,と穴が開いたような心地がした。
なんで,と思っても理由なんかない。たまにあるんだこういうのが。面倒くせえ。

「……一人楽しすぎるぜ」

両手をブルゾンのポケットに突っ込んで空を見上げて呟いてみる。
一人で居るのが嫌なんじゃない。一人であることを実感する自分が嫌なんだ。

油断すると傾いていきそうになる胸の裡を誤魔化すように口笛を吹きながら歩調を速める。
自転車なら十分で着くバイト先。余裕は見ているけど,のんびり歩いてたら昼メシ食う時間逃しちまう。
吐き出す息が白い。
ちくしょー。寒いぜくそったれ。
肩を竦めるようにして歩くと,なんだか身体が縮んだような心地がした。

「おはよう。早いねギルベルト」

店の裏口から入って更衣室で上着を脱いでいるとドアが開いてバイト仲間のマシューが顔を覗かせた。
伸び気味の淡い金髪に細縁の眼鏡。笑う顔は気弱そうなくせに仕事に関しては超ドエス,という二重人格。

「時給を貰う以上,その分はしっかり働いてもらわないとね」

口癖のような台詞にお前は俺の雇い主か,と皮肉ると「雇い主ではないけど,一応先輩だからね。はい,外の掃き掃除よろしく」と箒とちりとりを押し付けられるのが常だった。