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クチナシの花(ルオ・タウ×ムバル)

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先ほどから、見た目とのギャップが著しい発言ばかりするルオ・タウはそのままの表情で答えた。首を振る角度はイエス。


「…い、意外です。花の名前を知っているだけでも意外なのに…花言葉も、ですか」
「ああ。クチナシの花。花言葉は―『至上の幸福』。私はとても、幸せです」
「はぁ……」


ルオ・タウが花言葉を話したという事実に驚いていたが、そのことから意識を離して改めてその花言葉を吟味する。

 ― 私はとても、幸せです。

ソフィアが花言葉の意味を知ってマナリルに送ったのかは分からないが、それはとても、今のソフィアにとってもマナリルにとっても合う言葉であった。


ムバルは先の幸せそうな笑顔のマナリルを反芻しながら、ルオ・タウに頷いた。


「とても…似合っていますね。花も、花言葉も」
「ああ。そう思う」


言いながら、ルオ・タウはムバルの腰を抱き寄せた。時々脈絡のない言動をする彼のことなので最近は大したことでは驚かなくなっていたが、ムバルは抱き寄せられる腰とは逆方向に足を踏み出した。
マナリルのことで幸せになったばかりだというのに何かされては、何となく…嫌だ。

何かするしない以前に、そもそもルオ・タウとムバルはそういう仲でもあるのだが。


「あの、ルオ・タウさん…?」
「ところで私はマナリル姫に嫉妬したようだ」
「は?」
「ムバル殿は今、マナリル姫に幸せにしてもらったのだろう。私もムバル殿に幸せにしてもらいたいと思う」
「は??」


逃げようとする腰を強く抱き、もう片方の手で顎を掴むと、もうムバルはルオ・タウの瞳を見ざるを得なかった。いつもは何を考えているのか分からない青い目に、冷汗を流す自分の姿が見えた。

…何だろう、この状況は。何だろう、その理屈は。


「な、何を言ってるんですか!? ていうか何をしようとしてるんですか!?? う、わ、――っ…!!」


近づいてくるルオ・タウの顔を止めることもできず、ムバルの束の間の幸せはすぐに彼に奪われてしまうのだった。
部屋にはまだ、クチナシの香が少しだけ残っていた。