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クチナシの花(ルオ・タウ×ムバル)

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そこに再度、部屋の扉が開いたかと思うと所用で出ていたルオ・タウが戻ってきたようだった。彼はマナリルがいたことにもほとんど表情を変えず、ムバルとマナリルがいるところに近づいた。
靴が床に当たるコツコツという音にマナリルも気づき、彼女の年頃の女の子は皆たいていは怖がるルオ・タウに臆することなく、ムバルと同じように花の自慢をしようとした。

だが、ルオ・タウはマナリルが口を開くよりも早く、手を花にかざして言った。


「これは、クチナシか」
「…! 当たりですっ! すごいです!」
「樹海の者は自然の中で暮らしているからな。たいていのものは分かる」


驚愕しながらも、この花を分かってくれる人に会えてマナリルは更に笑みを深めた。それとは対照的に、ムバルは博識だと思っていたルオ・タウの更なる博識ぶりに、ただただ驚くばかりだった。
どうやら彼の頭の中は書のことしか入っていないわけではないらしい。ムバルはといえば、書のことしか入っていない。これでは博識という単語の差が著しい。
様々な面で自分よりも上を行くルオ・タウの横顔を少しの悔しさを交えて見ていたら、あっ、とマナリルが声を上げた。


「すみません、お仕事中なのにいっぱい邪魔してしまって。お兄様にも見せに行かないと!」
「おや、シャムス様への報告はまだ済んでいなかったのですね。それは早くお見せしなくては」


どうやらここへは、彼女の愛するシャムスよりも先に…おそらく花を貰って真っ先に来たらしい。ムバルの胸の中で、誰よりも先に自分に知らせに来てくれたマナリルへの愛が溢れた。
…たぶん、おそらく、シャムスへの報告を長くするためにムバルが最初の報告相手なんだ、ということは気付かないでおくことにして。

もう扉のところまで移動していたマナリルは、ムバルとルオ・タウに振り返ってぺこりと頭を下げた。


「お邪魔しました! がんばってくださいね」
「姫様も、お気をつけて下さいね」


最後までいっぱいの笑顔で話してくれたマナリルの後姿を扉が閉まるまで見送ると、すぐ隣にいたルオ・タウが口を開いた。


「クチナシの花。…花言葉を知っているか」
「花言葉…? いいえ、存じないです。ルオ・タウさんは花言葉まで知っているんですか!?」


花の名前ならまだ納得できるが、まさか花言葉までこの男が知っているなんて!?