Ladybird girl
ここに来てはじめて、きちんと部屋を見渡してた。入ってきたばかりのころにはシンプルな、いやむしろ殺風景な印象を与えられたものの、よくよく見えればそれだけの部屋ではなかった。白とベージュを貴重にした家具たちの至る所にイギリスの少女趣味の産物が垣間見える。小さな枠に入れられ壁にかかった押し花。机の上の一輪差しにはピンクの薔薇。ソファに置かれたクッションには刺繍が施されていて、抱き締めるとラベンダーの香りがした。
イギリスに嫌われてはいるかもしれないけれど、拒絶されているわけでもない。
(あたしはここに来てもいいんだ)
クッションに顔を押しつけて、アメリカはごろりとソファの上で横になった。イギリスはまだ戻ってこない。いったいなんの用意をしているんだろう、思いながらそっと目を閉じた。指の痛みなんて、とっくに忘れてしまっている。
作品名:Ladybird girl 作家名:しもてぃ