神田襲撃事件 後編
とりあえず普段からユウから目を離さないようにする。
今回の事を糧に真面目に反省するさ・・・
神田襲撃事件 後編
「今のリーバーさんの言ってた事から推測すると、以前にそんな薬作ったことあるんですか?」
アレンの発言は実に的を得ている、と思った。
確かにユウをあんな姿にするような薬を開発できるのは科学班のヤツぐらいだと思うし、コムイはいつも変な薬品や機会を作って教団中を自分勝手な迷惑ごとで巻き込んだりするし・・・。
コムリンシリーズだって、その一つさ。
司令室にいる全員の目がコムイへと向けられた。
アレンに引き続き冷たい視線。
ミランダやクロウリー、マリからは同情の目線が送られていた。
「イヤ、今回はほんとに僕が犯人じゃないからねっ!?」
コムイは少しあわてたように反論する。
クロウリーはおずおずとした様子で発言する。
「ならば、先ほどの者をもう一度呼んで聞いてみればよいのではないか?」
そこにタイミングよく、再び司令室のドアが開いた。
瞬間、神田の頬は再びうっすらと赤く染まり、視線が釘付けになった。
ラビはその光景を見逃さなかった。
「すんません、室長!薬品渡すの忘れてて・・・」
完璧なタイミングで再び司令室にやってきたリーバー。
彼はいつもコムイの被害を一番近いところで受けているからこそ最も実状を知ってる者の一人であろう。
「リーバーさん」
アレンがリーバーへ問いかける。
周りは少し緊迫した様子だ。
リーバーはそんな空気を感じとってかうっ、と少し後ずさりをする。
「コムイさんって以前に男を女にする薬品を開発した事ってありますか」
「え・・・今回も室長がやったんすか・・?」
リーバーは苦々しい顔でコムイを見た。
僕じゃないってば、とコムイは反論する。
「確かにそんな薬品を開発した事は無い・・とは言い切れないんだけどね・・・・?」
今のコムイの発言にその場にいた全員の心が一つとなった。
彼らの思考、考え、思うことは同じだろう。
「「やっぱ犯人はコムイ(コムイさん)じゃねーか(じゃないですか)!」」
ラビとアレンは同時に叫びコムイをビッと指差した。
周囲からは溜息が聞こえる。
「イヤイヤイヤ、だから犯人は僕じゃないからっ」
どうして僕に神田くんを女にする必要なんてあるのさっ、と慌てた様子で答える。
しかし十中八九犯人はコムイだろう。
ラビは隣にいる神田を見た――――――いや、見ようとした。
今まで彼女の立っていた位置から姿を消していたのだ。
「・・・神田?」
リナリーの声が聞こえた。
ぱっと顔を上げ、周りに視線を巡らせる。
次フラフラと足元がおぼつかない様子で歩いていく神田を見つけた。
その先には、リーバーがいた。
まさか、と思ったときには遅かった。
「リーバー・・・」
神田が、そのままリーバーに抱きついた。
周りの視線が釘付けになる。
一番驚いているのはリーバー自身のようだ。
「ちょっ・・神田っ!?」
僅かに顔を赤くしたリーバーが慌てて神田の肩を掴み引き離そうとする。
チュッ
物音一つしない広い空間に一瞬耳に響く音がした。
リナリー、ミランダ、マリ、クロウリーは顔を赤くして目を丸くし、ティエドールは動かなくなった。
コムイ、ラビ、アレンは信じられないといった様子だった。
神田は周りが自分を一直線に見てることを知ってか知らずか、リーバーに抱きついたままの体勢で止まっていた。
リーバーは顔を真っ赤にし脳と体の機能が停止したように微動だにしない。
「ユ、ユ、ユ・・・ユウがっ・・・・」
ラビは体を震わせながら、腕を上げ指差しながら言った。
アレンはそっとラビの隣に並び、肩をポンッと叩いた。
「お気の毒ですね、ラビ」
肩を上げて諦めたように溜息をつくアレン。
神田はリーバーの顔から自分のそれを離し、呆然としているリーバーにうっすらと微笑み、また両腕に力を込めて抱きしめた。
その様子を見てリーバーより呆然としショックを受けた様子のラビにアレンが顔を上げて言う。
「お姫様、取られちゃいましたね」
リーバーさんに、と白髪の少年は続けた。
信じられなかった。
まさか、ユウが俺以外のヤツと、しかも他人の目の前で・・・・キ、キスするなんてっ!!
「しかも、口にさっ!?」
ラビは情けない表情で叫んだ。
一番驚いているのはリーバーだろう。
あれから全く微動だにしていない。
しかし、神田は変わらず彼を抱きしめ続けている。
周りの空気が一瞬止まった。
時間が流れ出すきっかけとなったのは、
「・・っおい!神田!!」
突然神田がふらっと力尽きたように倒れた。
それをリーバーが受け止める。
女性らしい細身の体。
シャツの隙間から見える真っ白な肌。
上気した頬、少し粗い息遣い。
元は男だが女の姿をしている彼女に思わずリーバーの頬も思わず赤みを増す。
「と、とりあえずリーバーくん!研究室に戻ろうっ」
ポンっと彼の肩を叩き元気よく声をかける。
コムイの額には大量の冷や汗が流れている気がした。
「室長、どうしたらいいんですか・・・」
自分の腕の中でぐったりと横になる神田からうまく視線を外しながら問う。
真っ先に答えたのはオレンジ頭の青年、ラビであった。
「ユウは俺が部屋で寝かせてくるさ」
とリーバーの腕の中で眠る神田を受け取ると足早に司令室から姿を消した。
依然として司令室の空気はおかしいままである。一種のカオスに犯されたような。
「それで、リーバーさん。あんな事があった直後に悪いんですけど・・」
と、アレンが申し訳なさそうに尋ねる。
話題は最初へと戻っていく。
「コムイさんは男を女にする薬を作った事あるんですか?」
信じられなかった。
普段から人をあまり好まないで、人前でベタベタするのを毛嫌いする彼が。
自分から、俺以外のヤツと、目の前で、キスするなんて・・・。
ラビは未だに先ほどの光景が頭に焼き付いて離れないようであった。
まさか自分の恋人が、と。
彼の腕の中で眠る彼、いや彼女の身に一体何があったのか。
早急に解決する必要があると結論を下した。
とりあえずアレンやリナリーに協力してもらってコムイをボコボコにするのが先決だな、と。
神田の部屋の前に着くと、ドアを開け中に入りベッドに彼女を横たわらせた。
何も無かったかのようにスースーと気持ちよさそうな寝息を立てている。
しばらくベッドの端に腰をかけ彼女を見つめていた。
そして彼女の頭を一撫でした後、額に軽いキスをし部屋を出た。
「あ、ラビ!」
食堂へ行くとアレンとリナリーが既に食事をとっていた。
いつもどおり山のように積まれたアレンの食事が周りの目を引く。
「早いな、アレン、リナリー」
「神田の様子はどう、ラビ」
リナリーは心配そうな顔をしてラビに尋ねる。
「今は気持ちよさそうにぐっすり寝てるさ」
さっきの続きなんですけどね、とアレンは続ける。
「とりあえず、コムイさんには制裁を加えておきました」
と、アレンは自身のイノセンスである左腕は掲げた。
発動すれば常人以上の力がある。
今回の事を糧に真面目に反省するさ・・・
神田襲撃事件 後編
「今のリーバーさんの言ってた事から推測すると、以前にそんな薬作ったことあるんですか?」
アレンの発言は実に的を得ている、と思った。
確かにユウをあんな姿にするような薬を開発できるのは科学班のヤツぐらいだと思うし、コムイはいつも変な薬品や機会を作って教団中を自分勝手な迷惑ごとで巻き込んだりするし・・・。
コムリンシリーズだって、その一つさ。
司令室にいる全員の目がコムイへと向けられた。
アレンに引き続き冷たい視線。
ミランダやクロウリー、マリからは同情の目線が送られていた。
「イヤ、今回はほんとに僕が犯人じゃないからねっ!?」
コムイは少しあわてたように反論する。
クロウリーはおずおずとした様子で発言する。
「ならば、先ほどの者をもう一度呼んで聞いてみればよいのではないか?」
そこにタイミングよく、再び司令室のドアが開いた。
瞬間、神田の頬は再びうっすらと赤く染まり、視線が釘付けになった。
ラビはその光景を見逃さなかった。
「すんません、室長!薬品渡すの忘れてて・・・」
完璧なタイミングで再び司令室にやってきたリーバー。
彼はいつもコムイの被害を一番近いところで受けているからこそ最も実状を知ってる者の一人であろう。
「リーバーさん」
アレンがリーバーへ問いかける。
周りは少し緊迫した様子だ。
リーバーはそんな空気を感じとってかうっ、と少し後ずさりをする。
「コムイさんって以前に男を女にする薬品を開発した事ってありますか」
「え・・・今回も室長がやったんすか・・?」
リーバーは苦々しい顔でコムイを見た。
僕じゃないってば、とコムイは反論する。
「確かにそんな薬品を開発した事は無い・・とは言い切れないんだけどね・・・・?」
今のコムイの発言にその場にいた全員の心が一つとなった。
彼らの思考、考え、思うことは同じだろう。
「「やっぱ犯人はコムイ(コムイさん)じゃねーか(じゃないですか)!」」
ラビとアレンは同時に叫びコムイをビッと指差した。
周囲からは溜息が聞こえる。
「イヤイヤイヤ、だから犯人は僕じゃないからっ」
どうして僕に神田くんを女にする必要なんてあるのさっ、と慌てた様子で答える。
しかし十中八九犯人はコムイだろう。
ラビは隣にいる神田を見た――――――いや、見ようとした。
今まで彼女の立っていた位置から姿を消していたのだ。
「・・・神田?」
リナリーの声が聞こえた。
ぱっと顔を上げ、周りに視線を巡らせる。
次フラフラと足元がおぼつかない様子で歩いていく神田を見つけた。
その先には、リーバーがいた。
まさか、と思ったときには遅かった。
「リーバー・・・」
神田が、そのままリーバーに抱きついた。
周りの視線が釘付けになる。
一番驚いているのはリーバー自身のようだ。
「ちょっ・・神田っ!?」
僅かに顔を赤くしたリーバーが慌てて神田の肩を掴み引き離そうとする。
チュッ
物音一つしない広い空間に一瞬耳に響く音がした。
リナリー、ミランダ、マリ、クロウリーは顔を赤くして目を丸くし、ティエドールは動かなくなった。
コムイ、ラビ、アレンは信じられないといった様子だった。
神田は周りが自分を一直線に見てることを知ってか知らずか、リーバーに抱きついたままの体勢で止まっていた。
リーバーは顔を真っ赤にし脳と体の機能が停止したように微動だにしない。
「ユ、ユ、ユ・・・ユウがっ・・・・」
ラビは体を震わせながら、腕を上げ指差しながら言った。
アレンはそっとラビの隣に並び、肩をポンッと叩いた。
「お気の毒ですね、ラビ」
肩を上げて諦めたように溜息をつくアレン。
神田はリーバーの顔から自分のそれを離し、呆然としているリーバーにうっすらと微笑み、また両腕に力を込めて抱きしめた。
その様子を見てリーバーより呆然としショックを受けた様子のラビにアレンが顔を上げて言う。
「お姫様、取られちゃいましたね」
リーバーさんに、と白髪の少年は続けた。
信じられなかった。
まさか、ユウが俺以外のヤツと、しかも他人の目の前で・・・・キ、キスするなんてっ!!
「しかも、口にさっ!?」
ラビは情けない表情で叫んだ。
一番驚いているのはリーバーだろう。
あれから全く微動だにしていない。
しかし、神田は変わらず彼を抱きしめ続けている。
周りの空気が一瞬止まった。
時間が流れ出すきっかけとなったのは、
「・・っおい!神田!!」
突然神田がふらっと力尽きたように倒れた。
それをリーバーが受け止める。
女性らしい細身の体。
シャツの隙間から見える真っ白な肌。
上気した頬、少し粗い息遣い。
元は男だが女の姿をしている彼女に思わずリーバーの頬も思わず赤みを増す。
「と、とりあえずリーバーくん!研究室に戻ろうっ」
ポンっと彼の肩を叩き元気よく声をかける。
コムイの額には大量の冷や汗が流れている気がした。
「室長、どうしたらいいんですか・・・」
自分の腕の中でぐったりと横になる神田からうまく視線を外しながら問う。
真っ先に答えたのはオレンジ頭の青年、ラビであった。
「ユウは俺が部屋で寝かせてくるさ」
とリーバーの腕の中で眠る神田を受け取ると足早に司令室から姿を消した。
依然として司令室の空気はおかしいままである。一種のカオスに犯されたような。
「それで、リーバーさん。あんな事があった直後に悪いんですけど・・」
と、アレンが申し訳なさそうに尋ねる。
話題は最初へと戻っていく。
「コムイさんは男を女にする薬を作った事あるんですか?」
信じられなかった。
普段から人をあまり好まないで、人前でベタベタするのを毛嫌いする彼が。
自分から、俺以外のヤツと、目の前で、キスするなんて・・・。
ラビは未だに先ほどの光景が頭に焼き付いて離れないようであった。
まさか自分の恋人が、と。
彼の腕の中で眠る彼、いや彼女の身に一体何があったのか。
早急に解決する必要があると結論を下した。
とりあえずアレンやリナリーに協力してもらってコムイをボコボコにするのが先決だな、と。
神田の部屋の前に着くと、ドアを開け中に入りベッドに彼女を横たわらせた。
何も無かったかのようにスースーと気持ちよさそうな寝息を立てている。
しばらくベッドの端に腰をかけ彼女を見つめていた。
そして彼女の頭を一撫でした後、額に軽いキスをし部屋を出た。
「あ、ラビ!」
食堂へ行くとアレンとリナリーが既に食事をとっていた。
いつもどおり山のように積まれたアレンの食事が周りの目を引く。
「早いな、アレン、リナリー」
「神田の様子はどう、ラビ」
リナリーは心配そうな顔をしてラビに尋ねる。
「今は気持ちよさそうにぐっすり寝てるさ」
さっきの続きなんですけどね、とアレンは続ける。
「とりあえず、コムイさんには制裁を加えておきました」
と、アレンは自身のイノセンスである左腕は掲げた。
発動すれば常人以上の力がある。