人生は須らく結果オーライなのである
戯言だったのだ。そもそもが。
いや、本気半分冗談半分と言うべきか。
可愛い恋人を自宅へと引きずり込んで、まあその……なんだ。リビング、バスルーム、ベッドルームと場所を変えてコトに及んだ後の寝台の上での話だったのだ。可愛い恋人に腕枕をしてやって、その髪を撫ぜ、頬をついばんで。そうして想像しただけなのだ。
今のようにいつもいつまでも鋼のが私の家に居てほしいと。そして私と鋼のと私たちの子供が赤い屋根の家で共に暮らす……などというあり得ない未来を思い浮かべただけだった。
いや、もちろん我々の子どもなどというのものは空想というよりは妄想のカテゴリーの入ることなどわかっていた。私たちは共に男だ。ならば男同士でいわゆる子どもを作るような行為をしたところで何も出来るはずなどあるはずはない。それが当たり前で、自然の摂理であることなど重々承知だ。もとより子供を持つ気など私にはこれっぽっちも無かったのだ。ヒューズという私の悪友がその妻であるグレイシアと愛娘のエリシアの惚気をこれでもかと告げてきたところで喧しいとしか思えなかった。だが、しかしなのだ。ただついうっかり、そうだ出来心のような気持ちでポロっと零しただけなのだ。
「私と君の子供がもしも出来たとしたら、それはそれは幸せだとは思わないかね」
などと。
全くもって戯言だろう。そんなこと、この私にだってわかっている。だから何を馬鹿なこと言ってんだ大佐男同士で子供なんかできるわけねえだろとかまあそういう返答を想定していたのだが。けれど鋼のは私の腕のでじっと何かを考えているようで。しばらくの後決心したかのように、
「本気でオレ達のコドモ欲しいんか、大佐は」
と尋ねてきた。おや、鋼のは機嫌がいいのだな、なんて私は浮かれて。じっと見つめてくる金色の瞳にもちろんだとばかりにキスを贈った。
「私が軍務から自宅に戻るとだね、白いエプロンの君が夕食の準備をしているんだよ。玄関先でそのいい匂いが漂ってきて、食事にするかそれとも先に風呂に入るかそれとも……と、まあそういうふうに出迎えてくれるんだ。男のロマンだろう?ああ、それからね、例えばね、君にも似ていて私にも似ている可愛い子どもがお帰りパパとだね、ぱたぱたとスリッパの音を立てて飛び込んできてくれるというのもいいね。私は子どもをこの腕に抱きあげて、ただいまのキスを君と子どもにするんだよ。絵にかいたような幸せだろう。ああ、もちろん私にとっては君さえいればそれだけで十分すぎるほど幸せなのだがね」
本当に、ベッドの上での事後の他愛のない会話だったのだ。
だから。
「ふーん、じゃ、オレが大佐のコドモ産んでやるよ」
という鋼のの言葉は、お誘いの言葉にしか取れなくて。
もちろんそのまま私は可愛らしい恋人に子作りだとかいいながらまあそのなんだ。揉んだり舐めたり吸ったり入れたりして当然の如く美味しくいただいたりもしたのだが。めくるめく快楽のひと時だったのだが。
だが。
しかしだ。
……本当に鋼のが子供を産むとは思わなかった。
だってそうだろう。私も鋼のも男なのだ。下半身には突き出たモノが付いているのだ。鋼のだってサイズ的には少々小ぶりだが、立派なものが金色の茂みに隠れてそれでもきちんとその存在を主張していたりするのである。それがニセモノではないということはこの私が一番よく知っているのだ。今までに何度も何度もそう何度もだ!数えきれないくらいの回数を舐めて擦って吐き出させてきたのだから。
が、しかし。
そんな戯言を言ったその後日。鋼のはその腕に赤ん坊を抱いて私の家にやってきた。
「ほらよ、大佐。オレとアンタの赤ん坊。産んできたから一緒に暮らそうぜ」
と、実に簡単に。
その時のこの私の心境が誰にわかるだろうか。
一緒に暮らそうぜ、は、正直嬉しい。
オレとアンタの赤ん坊、というのが空想上のものであるのならそれはそれで幸福だ。
が、現実に、いるのだ。きゃあきゃあと笑顔の赤ん坊が。
鋼のの、その腕の中に。
金色の瞳で黒髪の赤ん坊が。
何故っ!鋼のが子供を産むんだ!どうして産めるんだね!!
パニックに陥りかけた私に鋼のは何でもないことのように告げてきた。
「あ、そっか。オレ大佐に言ってなかったっけ?」
「何を、かね……」
恐る恐る聞いたその返答は全くもって想定外、であった。
「オレ、実は半分人間で半分魔女なんだ。女ならコドモ産んでも不思議じゃねえだろ?」
その時のこの私の心境が誰にわかるだろうか。わかる者がいたら即座に挙手したまえよ。
魔女、というのは魔法というものが使える女性ではないのかね鋼の。君は男なのだから魔男……ではおかしいか。ああ、ええと、魔法使いということでは……ああいやいや、鋼のは魔法使いなどではなくて錬金術師だ。というか魔女とはなんだ?何故男の鋼のが魔女なのだ?
「母さんがさー魔女の一族の血を引いてて。ま、オレはまだ魔女の世界では成人してねえから。ま、言ってみれば『魔女っ子』ってくらいなんだけど」
魔女っ子というとあれだろうか。エリシアが好んで見ているアニメの主人公によく登場している、あの、わけのわからんスティックを振りかざして超常能力を使用する成人前の女性というか少女のことか。ええとまて、それは物語の中の存在というか実在しない空想上の人種ではないのかね?
「あ、アルフォンスは普通の人間だけどさ、オレが魔女の血受け継いでいるみたいで。一応母さんに魔女修行もさせられたんだけど、あんまりそっちの才能は芳しくなくってさ。オレが使える魔法なんてたかが知れてるっていうか。そもそもがオレ、人間と魔女の血混ざってる半端もんだから使える魔法のレベルも低くってさ。まあ錬金術駆使した方ができることなんて多いから魔法なんて使わねえんだけど」
そうなのかね?などと乾いた返答をしてみたのだがいかんせん。思考が鋼のの言動を拒否している。
「だけど、人間種族的に言えば男なんだけどさ、まあ一応魔女っつーくらいだからそっちの性別ではオレ女なんだよな。うん、だから産んでみた。ど?夢叶って嬉しい?」
自慢げに微笑む鋼のは可愛らしいが。
だがしかし。少々待ってはくれないか?
そもそもどこからどう突っ込んでみたらいいのだろうか。
ああそうだ、少なくともあの戯言を告げて、寝台遊戯を繰り広げた日からまだ一週間もたっていないのだからして。これは……そうだ。鋼のが生んだ赤ん坊ではなくて、どこぞから子どもを連れてきたというか借りてきたのだろうか?そうだそうだ。常識的に考えてみればそうだろう。だがしかし、こう都合よく金瞳に黒髪の生まれたての赤ん坊などいるわけが。そもそも金の瞳などとはエドワードとアルフォンス以外に見たことがないのだが。ああ、金の瞳は魔女の血筋の印なのだろうか。いや、確か瞳の金は彼らの父親の方だと言っていたような言っていなかったような……。
いや、本気半分冗談半分と言うべきか。
可愛い恋人を自宅へと引きずり込んで、まあその……なんだ。リビング、バスルーム、ベッドルームと場所を変えてコトに及んだ後の寝台の上での話だったのだ。可愛い恋人に腕枕をしてやって、その髪を撫ぜ、頬をついばんで。そうして想像しただけなのだ。
今のようにいつもいつまでも鋼のが私の家に居てほしいと。そして私と鋼のと私たちの子供が赤い屋根の家で共に暮らす……などというあり得ない未来を思い浮かべただけだった。
いや、もちろん我々の子どもなどというのものは空想というよりは妄想のカテゴリーの入ることなどわかっていた。私たちは共に男だ。ならば男同士でいわゆる子どもを作るような行為をしたところで何も出来るはずなどあるはずはない。それが当たり前で、自然の摂理であることなど重々承知だ。もとより子供を持つ気など私にはこれっぽっちも無かったのだ。ヒューズという私の悪友がその妻であるグレイシアと愛娘のエリシアの惚気をこれでもかと告げてきたところで喧しいとしか思えなかった。だが、しかしなのだ。ただついうっかり、そうだ出来心のような気持ちでポロっと零しただけなのだ。
「私と君の子供がもしも出来たとしたら、それはそれは幸せだとは思わないかね」
などと。
全くもって戯言だろう。そんなこと、この私にだってわかっている。だから何を馬鹿なこと言ってんだ大佐男同士で子供なんかできるわけねえだろとかまあそういう返答を想定していたのだが。けれど鋼のは私の腕のでじっと何かを考えているようで。しばらくの後決心したかのように、
「本気でオレ達のコドモ欲しいんか、大佐は」
と尋ねてきた。おや、鋼のは機嫌がいいのだな、なんて私は浮かれて。じっと見つめてくる金色の瞳にもちろんだとばかりにキスを贈った。
「私が軍務から自宅に戻るとだね、白いエプロンの君が夕食の準備をしているんだよ。玄関先でそのいい匂いが漂ってきて、食事にするかそれとも先に風呂に入るかそれとも……と、まあそういうふうに出迎えてくれるんだ。男のロマンだろう?ああ、それからね、例えばね、君にも似ていて私にも似ている可愛い子どもがお帰りパパとだね、ぱたぱたとスリッパの音を立てて飛び込んできてくれるというのもいいね。私は子どもをこの腕に抱きあげて、ただいまのキスを君と子どもにするんだよ。絵にかいたような幸せだろう。ああ、もちろん私にとっては君さえいればそれだけで十分すぎるほど幸せなのだがね」
本当に、ベッドの上での事後の他愛のない会話だったのだ。
だから。
「ふーん、じゃ、オレが大佐のコドモ産んでやるよ」
という鋼のの言葉は、お誘いの言葉にしか取れなくて。
もちろんそのまま私は可愛らしい恋人に子作りだとかいいながらまあそのなんだ。揉んだり舐めたり吸ったり入れたりして当然の如く美味しくいただいたりもしたのだが。めくるめく快楽のひと時だったのだが。
だが。
しかしだ。
……本当に鋼のが子供を産むとは思わなかった。
だってそうだろう。私も鋼のも男なのだ。下半身には突き出たモノが付いているのだ。鋼のだってサイズ的には少々小ぶりだが、立派なものが金色の茂みに隠れてそれでもきちんとその存在を主張していたりするのである。それがニセモノではないということはこの私が一番よく知っているのだ。今までに何度も何度もそう何度もだ!数えきれないくらいの回数を舐めて擦って吐き出させてきたのだから。
が、しかし。
そんな戯言を言ったその後日。鋼のはその腕に赤ん坊を抱いて私の家にやってきた。
「ほらよ、大佐。オレとアンタの赤ん坊。産んできたから一緒に暮らそうぜ」
と、実に簡単に。
その時のこの私の心境が誰にわかるだろうか。
一緒に暮らそうぜ、は、正直嬉しい。
オレとアンタの赤ん坊、というのが空想上のものであるのならそれはそれで幸福だ。
が、現実に、いるのだ。きゃあきゃあと笑顔の赤ん坊が。
鋼のの、その腕の中に。
金色の瞳で黒髪の赤ん坊が。
何故っ!鋼のが子供を産むんだ!どうして産めるんだね!!
パニックに陥りかけた私に鋼のは何でもないことのように告げてきた。
「あ、そっか。オレ大佐に言ってなかったっけ?」
「何を、かね……」
恐る恐る聞いたその返答は全くもって想定外、であった。
「オレ、実は半分人間で半分魔女なんだ。女ならコドモ産んでも不思議じゃねえだろ?」
その時のこの私の心境が誰にわかるだろうか。わかる者がいたら即座に挙手したまえよ。
魔女、というのは魔法というものが使える女性ではないのかね鋼の。君は男なのだから魔男……ではおかしいか。ああ、ええと、魔法使いということでは……ああいやいや、鋼のは魔法使いなどではなくて錬金術師だ。というか魔女とはなんだ?何故男の鋼のが魔女なのだ?
「母さんがさー魔女の一族の血を引いてて。ま、オレはまだ魔女の世界では成人してねえから。ま、言ってみれば『魔女っ子』ってくらいなんだけど」
魔女っ子というとあれだろうか。エリシアが好んで見ているアニメの主人公によく登場している、あの、わけのわからんスティックを振りかざして超常能力を使用する成人前の女性というか少女のことか。ええとまて、それは物語の中の存在というか実在しない空想上の人種ではないのかね?
「あ、アルフォンスは普通の人間だけどさ、オレが魔女の血受け継いでいるみたいで。一応母さんに魔女修行もさせられたんだけど、あんまりそっちの才能は芳しくなくってさ。オレが使える魔法なんてたかが知れてるっていうか。そもそもがオレ、人間と魔女の血混ざってる半端もんだから使える魔法のレベルも低くってさ。まあ錬金術駆使した方ができることなんて多いから魔法なんて使わねえんだけど」
そうなのかね?などと乾いた返答をしてみたのだがいかんせん。思考が鋼のの言動を拒否している。
「だけど、人間種族的に言えば男なんだけどさ、まあ一応魔女っつーくらいだからそっちの性別ではオレ女なんだよな。うん、だから産んでみた。ど?夢叶って嬉しい?」
自慢げに微笑む鋼のは可愛らしいが。
だがしかし。少々待ってはくれないか?
そもそもどこからどう突っ込んでみたらいいのだろうか。
ああそうだ、少なくともあの戯言を告げて、寝台遊戯を繰り広げた日からまだ一週間もたっていないのだからして。これは……そうだ。鋼のが生んだ赤ん坊ではなくて、どこぞから子どもを連れてきたというか借りてきたのだろうか?そうだそうだ。常識的に考えてみればそうだろう。だがしかし、こう都合よく金瞳に黒髪の生まれたての赤ん坊などいるわけが。そもそも金の瞳などとはエドワードとアルフォンス以外に見たことがないのだが。ああ、金の瞳は魔女の血筋の印なのだろうか。いや、確か瞳の金は彼らの父親の方だと言っていたような言っていなかったような……。
作品名:人生は須らく結果オーライなのである 作家名:ノリヲ