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そして今日だ。
よくよく考えたら俺の特異体質が広まるのは当然のことだったとしか言いようがないし、こうなるのも必然だったかもしれない。ただ俺はどくどく流れる赤い血液を見ながら考えた。ああ、ここでもし死んじまったらもうあの男は殺せねえな。脳裏に臨也のにやつく顔が浮かんだ。ああ、なんでここで思い出すのがあいつなんだよ。なんで幽でも誰でもなく。ああだけど。俺はあいつのにやついた顔を思い出す。自分の人生で最後に殴れる人間がいるなら、もしも最後に殴る人間を選べるなら、それは、・・・あいつがいいかもしれない。
あいつを殴りたい。
そう思って俺は声をしぼりだす。「・・・、・・たすけて」
ふいに視界が暗くなる。ぼやけたままの赤い路地に黒い影が重なる。誰かが俺に手を伸ばす。その手がやさしく俺の髪をさわって、「・・・さよなら、シズちゃん。楽しかったよ」そのまま額にキスを落とす。されるがままになりながら、俺はしずかに思いを馳せる。ああ、結局俺は、
その手に握ったナイフに気づいて、俺はそれをかっさらう。驚いたように目を見開いたその男の左胸にそれを突き立てて、俺はにやりと笑ってみせた。
「・・チェックメイトだ」
そのまま男の体に倒れかかると、冷えた俺の体にじわりとぬくもりが沁み込んだ。大嫌いな男の体温の中で、俺はしずかにほほえみながらー
そっと目を閉じた。