怪盗×名探偵 短編集
「ヒドイ! 俺は新一のことこんなに大好きなのに!」
「へえ、オメーがそれを言うのか?」
え?
勢いで言った言葉は別に嘘じゃない。疑われる要素なんてこれっぽっちもなかったはずだ。
大仰な身振り手振りで愛を伝えていた快斗の動きがぴたりと止まると、新一は意味深な笑みを携えて立ち上がった。コーヒーでも取りにいくのか、後ろを付いて行こうとしても身体が動かない。
その一言に込められる意味が多すぎて、快斗の思考はストップしそうだった。例えばの話だ。
演技をしているのはお互い様だとしたら。
「……わあ、参った」
いつものように砂糖はたっぷりいれてくれるだろうか。無糖で出されないことを切に祈った。
怪盗キッドという名の紳士は、甘いものなど口にしないのである。多分。
作品名:怪盗×名探偵 短編集 作家名:knm/lily