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第二章 廃墟からの復活
フリッツ親父、俺はもう一度国になるらしい。
「なんで、俺が。」
呆然と呟いた言葉は独特の間延びした言葉に打ち消される。
「そんなんオレが知るわけないし
だからさっさとロシアんとこ行け言うにー」
この会話で俺のポーランド生活はふいに終りを告げた。
別にこいつとはウン百年前から仲が悪いし出ていくのは別にいいんだが、行き先がロシアの所だと言うのは何て言うか…いい予感がしない。
ポーランド自身も何度も分割の憂き目にあわされているからあいつの事は良く思っていないはずなのにだ。
それを、しかも国になれだと?既に国家としての座はヴェストに譲った。プロイセン王国は地図の上から消え失せ、僅かに名前を一地方として残すのみとなっていたはずだ。
そんな俺に。もう一度国になれとは何が目的だというんだ、あの北の大国は。
「出てくのは別にいいけどよ。なんか急すぎねぇか」
そう言うといつもの何も考えてないような声色がツンととがる。
「お前にはなんも教えてなかったから、知らんのはあたりまえだし」
「なんだよそれ」
「あの飲んだくれに聞いた方が早いしー
さっさと出てけ」
いかにも邪魔だと言うように言われれば、こっちだって好きでここにいるわけじゃなし、さっさと出ていってやるが一つ二つ気になることがある。
こいつは隠し事をしている。
それは確かだ。ロシアに聞いた方が早いとは多分事の重要なところにあいつが絡んでいるのはほぼ間違いがない。
ここ数年ポーランドに居候という形で住んでいたが元々の仲が悪いせいか外の情報は俺のところまで届かなかった。この脳天気なポーランドが情報統制なんてことはないと思っていたが、もしかしたらこの状況はそういうことだったのかもしれない。なかなかやってくれる。
そこまでして隠す今の外の世界がどうなっているのか。
考えてみれば、ドイツは負けて分割された。そこで終わりではない。世界は常に流動する。あれから数年しか経っていないのだからと呑気に構えていた自分が情けなくなった。
地方生活に埋もれて国としての情勢の読みが鈍っていた。
今世界に何が起こっているのか。それが一番必要なことに思えた。
「詳しいことはあいつに聞くから今の世界情勢を簡単に話せよ」
そう問い詰めるとポーランドはふてぶてしく嫌そうな顔をした。