この歌を届けよう
そのあとしょうがないとでも言うようにしぶしぶ口を割った。
そこで聞いた話は世界が二つに分かれて睨みあっているという途方もない話だった。
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二つの勢力。二つの思想。その争いのためベルリンが、俺の街が、犠牲になっている。
今あの街は鉄道や道路を封鎖され、電力供給も止められ飢えの恐怖と寒さに震えているのだという。
これがあの凄惨な戦いの後に拓ける新世界だというのか。
なんてことはない。二人の大国の意地のはりあいではないか。
話もそこそこにポーランドの家から飛び出し本来ならロシアのある北へ向かうところを西へ西へと走った。
ベルリンを今この目でみたい。見なければいけない。
ほんの数年前ヴェストと別れたあの街が今どうなっているのかを。あの時も瓦礫だらけで、もとの街は面影程度にしか残っていなかった。それでも人々は俯きながらも新たな一歩を歩みだしていたのだ。
途中道路を封鎖する数名の警備兵たちに出くわした。彼等は検問所を作り道路はバリケードをはって、手に手に銃を携行している。
ベルリン封鎖は本当だったのだ。
封鎖線に近付くと気付いた何人かが寄ってくる。
「現在この道路は封鎖されている。無理にでも通るというのなら発砲を許可されている」
ロシアの所の人々らしき警備兵は淡々と質問する。その手はぬかりなく携行する銃にかかり、すぐにでも撃てるというジェスチャーを見せる。
その顔を睨みつけ焦る心そのままに巻くし立てた。
「そこを通せ!俺を誰だと思ってんだ!先の戦いをヴェストと、ドイツと共に戦ったプロイセンだ!このドイツの東半分はこの俺だ!俺が許可するからいいんだよ!そこを通せ!」
自分でもこれで退くわけはないとわかっているし、今のご時世撃たれても文句は言えないようなことを言っているのも知っている。
けれど言わずにはいられなかった。
叫んだ途端兵士たちは銃をかまえる。明らかに不審者だと断定されたに違いない。
こんな時、人間と区別のつかない外見は不便だ。自分が国だと名乗っても誰も信じないのだ。信じてもらってもだからどうだと言われればそれまでなのだが。
確かに国という、人間と姿形が同じ存在がいることは知れている。しかしそれでも自国のヤツしか知らなかったり、それすらも知らない人間も沢山いる。ある意味妖怪や都市伝説のような存在なのだ俺達は。