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夏だ!おばけだ!ウサ耳だ!池袋納涼肝試し!ポロリもあるよ!

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夏だ!おばけだ!ウサ耳だ!池袋納涼肝試し!ポロリもあるよ!









池袋には心霊スポットが多数ある。
有名なのは通称巣鴨プリズンと呼ばれた巣鴨拘置所。ここで60名の刑が執行された。
跡地は現在大勢の人でにぎわうサンシャインシティであり、東池袋中央公園にはそれに因んだ弔いの碑が置かれている(※写真1)
また最近リッパーナイトがあった現在閉鎖されている南池袋公園(当時の根津山)だ。
(リニューアル開園は平成27年予定)
ここには空襲の犠牲者およそ500名以上が仮埋葬され、その後遺体は掘り起こされ荼毘に伏された。だが見つかりきらなかった人々が今もまだ眠っているといわれる。夜間に木の上や付近に人ならざる者が出没すると多数の証言があるが、工事中のため現在では確認できない。
注目すべきは怪奇現象の目撃談が他の心霊スポットとより『人が多く集まっている場所』という点である。
日本の三大副都心でありながらダークな一面をもつ池袋らしい話ではないだろうか。
(「池袋の怪談」:著者九十九屋真一より一部抜粋)




















「「・・・でるんだよ」」
「な、なにがですか・・・」

池袋で最もケンカを売ってはいけない取立て屋、平和島静雄と田中トムに凄まれて帝人は別の意味で萎縮した。
肩からかけているカバンをぎゅうっと掴む。
こんな圧迫感を受ける人達を前にむしろ萎縮しない方がおかしい。

「でるっつったらアレよ。心霊よ」
「・・・お化けですか?」
「ひらたく言やな」

思わず身を乗り出す帝人に肩をすくめてトムが説明する。
しかし非日常マニアの帝人はそういうゴシップ系の話題に目をキラキラ輝かせた。
反して平和島静雄はさっきからやけに静かだ。いつも吸っているタバコすら口にしていない。

『大丈夫か?』

セルティのPDAにも微妙に反応が遅れた。

「・・・おう」
「昨日コイツ見ちまってさ。まあ、俺もなんだけど。正直気が落ち着かなくってな。
取立ての仕事なんざ夜が本番だから、こりゃマズイだろってことで対策練ろうとしたんだが・・・まさか都市伝説が来るたあなあ。
静雄、お前の知り合いなのか?」
「・・・はあ」
「・・・お前まだ目がうつろだぞ。で、坊主は御払いとかの関係者?」
『違う。ただの友人だが付き合って来てもらった。彼には重要な任務がある』
「へえ?」

驚きの目をトムが帝人に向ける。しかしこの発言に驚いたのは当の帝人だった。

「セルティさん?!ぼ、僕、霊感とか何も無いし御払いなんてできませんよ?!」
『大丈夫だ。秘策がある』

何故か自信満々にPDAを印籠のように掲げられ二の句が継げない。
ついさっきセルティと道端で出会い、先日のUFO騒ぎの話をしつつ自分のしょうもない体験談を披露したのだが、突然訳も分らぬままバイクに乗せられここへ連れられて来てしまった。
一体何が彼女にクリティカルヒットしたのか。
意気揚々と進むセルティの後ろを取り立て2人組がその後をとぼとぼ帝人がついていく。
気をまぎわらそうと思わず前の2人に声をかけた。

「お2人は・・・幽霊とか見えるんですか?」
「・・・あ?ああ、俺は普通。何となく嫌な気配っぽいの感じるだけなんだが・・・」

そこでトムは静雄を見る。
つられてもう一人の方に目を移すとその体躯に似合わず陰鬱な雰囲気に包まれていた。

「・・・静雄さんも?」
「コイツの方が霊感バリッバリなんだわ。はっきり見えるらしい」
「トムさん・・・」
「今更隠したってしょうがねーべ」
「静雄さんが・・・その、幽霊信じてたのが意外です・・・」
「・・・・・・信じるっつーか、見えるもんはしょうがねーだろ・・・・・・」

小声過ぎて風にすら攫われそうな声量でぽつぽつ返す。
あの池袋の自動喧嘩人形にこんな一面があったとは意外すぎる。
何だか気の毒になって帝人はつとめて明るい声をかけた。

「セルティさん秘策があるそうですから大丈夫ですよ」
「・・・ん・・・」

注射が嫌だと言う子供に諭すような気分だ。トムと帝人は目を合わせ、元気がない池袋最強に思わず苦笑いをした。




「ここだな」

セルティがビルとビルの隙間に立つ。
一見してただの路地裏のように見えるが、ピンクやオレンジ色の看板に隠れた店の存在を知らせる。
重くじめっとした空気はここに出ると言われなくても入りたくない程度には気味悪い。
帝人が頬を引き攣らせているとセルティが振り返った。

「よし、帝人!」
「は、はい!」
「装着!」
「えっ」

しゃきーん。帝人にウサ耳が装着された。
この間池袋をこの姿で闊歩したので、すでに恥ずかしさなど無いが一体ここで何故ウサ耳。

「坊主お前・・・それメイド喫茶の・・・」
「ち、違います!これは友だちに、ていうか友だちに押し付けようとしたけど返されて・・・!」
「なごむ・・・」
「「えっ」」

トムと帝人が静雄を見返すとサングラスをかちゃかちゃかけ直してうつむかれた。

「セ、セルティはどこ行ったっけな・・・」
『すまない。ここだ』

おそらく路地裏を見てきたのだろう、セルティがそこから出てきた。

「何してんだ?」
『いや、その幽霊は知り合いじゃないかと一応調べに・・・』
「・・・ああ、なるほど」

静雄は普通に受け入れていたが、残り2人は胸中に別の思いがよぎっていた。

(幽霊の知り合いがいるんだ(いるのかよ・・・))

さすが伊達に都市伝説を名乗ってない。

「そ、それより何でウサ耳なんですか?!重要な任務ってこれ?!?」
『そうだ』
「ええええええええええええ」
『新羅に聞いたんだ。幽霊の話をすると幽霊が寄ってくるが、エ、えッチな話をすると幽霊が逃げるという!!』
「・・・エッチって・・・」
「変換ミスってるぞ都市伝説」
「・・・お前新羅からメイド喫茶をどんな風に聞いてんだ?」
『・・・・・・いかがわしい事を男女でする場所だと』
「・・・合ってるような合ってないような・・・」
「それ風俗の方じゃね?」
「よし。アイツは後で殴る」

もはや幽霊退治とはまったく別の所で盛り上がる4人組の耳に、突如女の子の声が路地裏から聞こえた。



 【こっちよ・・・・・・】



「「・・・ッ!!」」

静雄が無言で手近の帝人に抱きついた。
極力そっちを見ないように青くなった顔を背けぶるぶる震えている。
子供がトイレに行くのを怖がってぬいぐるみを抱きしめるのと変わりなかったが、大の大人(金髪バーテン服)がウサ耳男子高校生に抱きついているという謎の構図だ。
トムもはっきりとした怪奇現象に顔が真っ青になる。
その中でセルティだけが男前にPDAを掲げた。

『いるみたいだな。じゃあ行こう』
「行くんですか?!」
「・・・ッ!!・・・ッ!!!」

驚く帝人と無言で首をふる取立て組とは対照的だ。

『しかしこのままだと仕事にならないと言ってただろう。大丈夫だ、帝人がいる』
「セルティさん!男のウサ耳はエッチじゃないです!!」
「そうだ!可愛いだろ!!」
「静雄、お前・・・」

わあわあ騒ぐだらしない男チームに痺れを切らし、セルティが帝人を引っ張る。
それに連られて静雄、トムが引きずられていく。