やりなおせない
「―いや・・、無理しなくていいんだぞ、あいつといっしょで、さぞ、つらかっただろう?」
『ううん。それがさ、なんか、あっちで会うのと全然違ってさ』
「だまされるな、あっちでのあいつが、あの男の本性だ」
『・・そ、うかな?なんか、おれ、あいつのこと、ちゃんとわかってなかったみたいで』
「わからなくていい!おれは、っよおおおおおおっく、知ってる」
『・・とうさん・・、それって、偏見だよ。メール貰っただろ?それだって、おれは嫌だったけど、あいつが礼代わりに送るって、やってくれたんだから。おれは、代わりに九代目に送ったんだ。すっごい喜んでくれたよ?ね?本当は、すごく』
「だまされるなああああ!あいつが、んな、いい子なわけねえだろがあ!」
『・・・・・親父・・』
「はい?」
『―これいじょう、あいつのこと悪く言ったら、即、縁切るから』
・・・・・笑顔で怒っていた、若き日の妻を彷彿させる、零下の声だった・・・。
「つ、・・つなあ、つっくん、つなよしくぅん、わかった。でも、でもな、頼むから、もう」
『今度、あいつの別荘に呼ばれたし、たぶん、おれたちきっと、もっとお互い理解しあえるような気がするしさ。安心していいよ』
・・・・不安です・・・・・。
後日会ったジジイの、喜色満面な抱擁をうけ、耳元で囁いてやる。
「あんたら親子、そっくりだぜ」「おまえたちのところは、似なくてよかったなあ」
挨拶は終わりだというように肩を叩かれ、心の底から相手を呪った。
さらに、一ヵ月後ほど後に、会議で来ていた、悪人面の当の息子を見つけ、殴りかかろうとしたところを、わが息子に割って入られ、父親としての信用を、さらに落とすこととなる・・。
そんな、思い出したくないことを、毎年思い出してしまう、しょっぱい夏・・・・。