心細い不在
鍵を開けて足を踏み入れると、主が不在の万事屋は不思議なほどがらんとしていることにいつも驚いてしまう。毎日ここへ通っていたはずなのに、銀さんのいない万事屋には僕の居場所はどこにもない。
銀さんが入院してからは家には帰らず万事屋で寝泊まりしていた。
姉上に向かって口にした「仕事が来るかもしれないから」なんて言い訳は、夜より病院に行っている日中のほうが来る確立が高いのだから当てはまらない。それに銀さんがいなければ簡単な依頼しか受けられないのだから、僕だけが万事屋にいたところで意味がないのだ。それでも、ここを無人にする気にはどうしてもならなかった。
銀さんはここからいなくならないだろうし、
こんなことくらいで死んだりしないはず。
頭ではわかっているはずなのに日毎じわじわと広がっていく不安は自分でもどうにもならず、足元がおぼつかない程の焦燥感にじっとしているのが酷く難しかった。
銀さんが欲しがるものをここから持ち出す度、万事屋からは銀さんの気配が薄くなっていく。
一週間。
たったそれだけの時間が気の遠くなるほど長く感じられる。気を抜くと鼻の奥がツンとして鼻水と一緒に涙が出てきてしまいそうだ。本人がいたところでただそこらに転がっているだけなのに、銀さんの不在をこんなにも心細く感じるなんて思いもしなかった。