お大事に
気のせいだ。久々に寝込んじまうようなキツい風邪ひきこんで、気も弱ってんだ。そうに決まってる。
即行で寝てやる。何も考えねぇし、何も想像したりもしねぇからな。
そう思うのに、そう、強く強く思ってるってのに、固く目を閉ざした俺の脳裏には羽鳥が片足を少し引いて、軸足と軽く足首を交叉させるようにして爪先をとんとんとやってるあの仕草が、その後ろ姿が浮かんで消えやしねぇと来た。
しかも片手に木べらなんか持ってやがる。
………俺は馬鹿か!
つうか、俺が馬鹿だ!!
「……ああ、ちくしょう……重症だぜ」
風邪は治っても、このビョーキは当分治っちゃくれそうになかった。