【腐デュラララ】にょた百合詰め合わせ【帝人受】
さらり、と、染めているにも関わらず艶やかで手入れがしっかりなされている印象が強く残る髪が揺れた。柄シャツとぴったりとしたパンツ姿は颯爽とした彼女の態度やほどよい肉付きをしている身体のラインによく似合っている。立ち振る舞いから通行人の視線を集めやすい彼女は、しかし整った雰囲気のある顔を絆創膏や包帯で半分ほど隠し、痛々しい姿をも露出させていた。彼女は風に靡く髪を押さえながら、視線をあちらこちらに彷徨わせ、ふと二人組の女子を見つけて目を輝かせる。
「へえ、そんなに人気なのか」
「はい!前に日曜日買いに行ったら売り切れちゃってて、けどクーポン券貰えたから しずさんと一緒にどうかなぁって思ったんです」
可愛らしいイラスト入りのクレープの割引券を握りしめながら、竜ヶ峰帝人はあどけない顔立ちをとろりと緩めて平和島静香へ笑いかけた。肉感的な身体を白のワイシャツと黒のベスト、太股露出が甚だしいミニスカートで包んでいる平和島静香は、帝人が頬を上気させながらこくこくと頷くのを見つめてふにゃりと笑う。伸びた金髪を揺らしながら、楽しみだな、と声を上げた静香は、割引券を握りながらほくほくとした調子で笑みを見せている帝人の頭を軽く撫でた。
「しずさん、何食べま ・・・ 」
帝人ははしゃいだ様子で声を上げるが、ふと言葉を止めてぱちりと瞬きをする。静香は首を傾げ、帝人が不思議そうに目の前の何かを見つめていることに視線を這わせて怪訝そうに眉を潜めた。目を輝かせながら帝人を見つめていた女に、静香は 千景 と声を上げる。
「あ、しずさんの、お友達さんですか・・・?」
帝人は興奮していた自分を恥じるように頬を赤らめながらも問いかける。静香が言いにくそうに いや と言葉を濁したところで、モデルのようにすらりとした脚を動かしながら千景と呼ばれた少女は帝人の元に歩み寄ってくる。
「何この可愛子ちゃん!」
朗々とした声に驚いた帝人が、思わず静香の後ろに隠れておずおずと視線だけを女性に向け続けた。静香はぼんやりと千景を見つめながら、うん、と頷く。
「黙って」
「静香何で黙ってたの!こんな可愛子ちゃん何でウチに紹介してくれないのー!意味分かんない!」
きゃあ、と千景は声高く静香をなじり、にっこりと笑みを浮かべて帝人に視線を送った。生来の気質でお人好しかつ人を疑わない帝人は、女性の屈託ない笑顔に瞬きをしてぺこりと頭を下げる。
「ウチ、六条千景っていうの。静香とは喧嘩友達ー」
「煩いでしょ、みか 無視していいから」
静香は呆れたように呟きながら、自分の後ろに隠れたままの帝人に声を上げた。静香がキレていない事実に、帝人はそっと静香から離れて自分の名前を呟く。
「帝人ね、ハニーか可愛子ちゃんか 呼び方はどっちのほうが好きかな?」
「千景・・・それ以上言ったらまた顔に傷出来ることになるわよ・・」
静香が淡々と呟いた言葉に、千景は一瞬顔を固まらせた後、何事もなかったかのように帝人を延々くどいていく。帝人はクレープの割引券を握りしめたまま もごもごと唇を動かし 頬をほてらせた。
作品名:【腐デュラララ】にょた百合詰め合わせ【帝人受】 作家名:宮崎千尋