【腐デュラララ】にょた百合詰め合わせ【帝人受】
かつん、かつん、かつん、と 音が 響くの だ
それはまるで、おかしな、おかしな発言のように、響くの だ。
「甘楽ね、思ったんだ。帝ちゃんは本当に愛してるのも抱きつきたいのもキスしたいのも抱かれたいのも気持ちいいのも嬉しいのも悲しいのも嫌だって感情すら甘楽にしか向かないんだって。けどね、帝ちゃんはすっごくすっごく優しいから甘楽にだけ向けてればいいのに周りにも分けちゃうんだって。博愛って素晴らしいよね帝ちゃん!けど周りはばかばっかりなんだから駄目だよ。勘違いしちゃうでしょ?勘違いさせるのって、良くないんだよ?」
甘楽は真っすぐに微笑みながら、帝人へ声を上げる。帝人は大きな瞳に涙を溜めながら、ひどい、とうわ言のように呟いた。甘楽は帝人の言葉を鼻で笑い、首を傾げて再び笑う。甘楽は美しかった。さらりと広がるストレートパーマがあてられた黒髪に、赤い瞳。すらりとしている身体にあてられた黒で纏められた服装は、もともと細身の彼女を更に細く見せている。そんな甘楽が情報屋の事務所として使っているその場所に呼ばれた挙句、延々と甘楽による言葉を受けた帝人は、涙を零してしまっては負けだとばかりに唇を噛みしめた。
「酷い?帝ちゃんも変なこと言うなぁ。あ、分かった。そんなこと言って甘楽の気を引きたいんだねぇ。いたいけだなぁ帝ちゃん。必至だなぁ。お望み通り帝ちゃんのことだけずーっと、考えていたくなっちゃうよ」
甘楽の呟きに、瞬間帝人の目に光がともった。甘楽は愛情だけが詰まっていると人に錯覚させるような甘い笑みを帝人だけに向けて目を細めながら けど と声を上げる。
「まだ、だぁめ 」
甘楽はくすり、笑みの種類を変換させて帝人へ視線を向けた。かたり、パソコンのキーボードを打ち始めた甘楽は、にこにこと楽しげに 帝人にではない笑みをパソコンへ向けながら ああ と思い出したように声を上げた。
「もう今日は帰っていいよ。タクシー代、そこの財布から持って行ってね?」
帝人は最後の抵抗として、財布には一瞥もくれずに甘楽の家から出てきたのち駅を乗り継いで、とぼとぼと家路についていた。ネオンが狂ったように目の奥を刺激していく。網膜を刺激するその鮮やかさに再びふがいない涙が浮かびかけた帝人は、ふるふると顔を振りながら、視線を下げて歩いていた。
「みか?」
人ごみの中で、聞きやすい落ち着いた言葉が振ってくる。帝人は視線を持ち上げ、静香を見つけて その瞬間ぽろりと涙を落とした。驚いたように静香の瞳は丸まり、すぐさま何かに思い当たったようで眉をしかめる。帝人の身体を最大限気遣っているかのように、静香はそっと帝人の服を握った。
「最低、みかに 変な気だけ持たせて」
静香は自販機で買った紅茶を帝人に渡しながら、低い声音で呟く。涙を我慢していた身体に優しいミルクティーを一口飲みながら、帝秘tおは弱弱しく静香に微笑みかける。
「そういう人だって、分かってますから」
「・・・あたしなら、 」
静香は口から出た言葉を飲みこみ、無言のままいちごミルクをこくりと飲む。甘党の静香に愛おしさを抱きながら、帝人は笑ったまま いいんです と声を上げる。静香は視線を彷徨わせながら 悲しそうに無言で帝人の隣にあり続けた。
「私、どうして静香さんのこと好きになれなかったのかな」
どうして、あの人だったのかな。帝人は弱く呟き、静香が答えもなく 肯定否定も無く、優しく自分の肩を叩いてくれた事実に安堵して再びぽろぽろと涙を流した。小さな少女から零れる涙は間違いない後悔と悔しさであり、その奥にあるのは愛情である。静香は帝人の涙が落ちていくミルクティーが、大層塩辛いものとなっているだろう予想に、ぱちりと瞬きをした。
(しんじゃえばいいのに、ひとを、ひっかきまわすだけなら、しんじゃえば)(このこのそばにいられるのは、あたしだけなのに)
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愛せないなら、傍に置くだけなんて やめてよ
作品名:【腐デュラララ】にょた百合詰め合わせ【帝人受】 作家名:宮崎千尋