可愛い子猫と愛日和
(あ、爪…伸びてるなぁ)
そういや最近切ってなかったっけ、と帝人は手を頭上に翳して、少し伸びた爪を見つめた
「あれ、帝人君どうしたの?」
そこに上階から戻ってきた臨也が姿を現したので、帝人は慌てて手を引っ込めて「いえ、」と言葉を零す
それを訝しく思った臨也は帝人の隣に腰掛けると、ひょいっと帝人の手を取った
「ひゃっ……臨也、さん?」
「いや、なにを気にしてたのかなって」
少し頬を染めて赤くなる帝人を気にすることなく、臨也はまじまじと帝人の手を見つめる
己のよりずっと小さな手だ
それに傷がなくて、白くて、指が長い
なんだか誘われたような心地になって、気がつけば臨也は帝人のその手の指にキスを落としていた
短いキスを何回も落として、そして赤い舌で指先を舐め上げる
その動作に帝人は、こんな時にも拘らず見惚れてしまった
「い、いい臨也さ……んっ…ぁ……ふ、やぁ……っ」
帝人の薄い唇から甘さを含んだ吐息と掠れた声が漏れる
臨也は帝人の反応に赤みがかった双眸を細め、喉の奥で笑った
「感じてるんだ」
「ち、ちが……ひゃ、ぁ…っ」
慌てて否定しようと口を開いた帝人だったが、臨也が指を銜えて軽く吸い上げた為に言葉が止まってしまう
幼顔を更に赤くさせ、同年代の男子より大きく思える眼には透明な雫を溜めるその姿に、臨也は興奮で背中がぞくぞくした
もっとその顔が見たくて、掌から手首、腕へと舌を伝わせる
ぴちゃり、と小さくも淫猥な水音が響き、帝人の鼓膜を振るわせた
「……っ、い、臨也、さん!」
「んぐっ!」
流されかけた帝人だったが、なんとか我に返ると、ぐいっと臨也の口を両手で塞いだ
突然の反抗に驚いた臨也だったが、すぐに端整な顔に不満を露にすると帝人の両手首を掴んで口から退かせた
「ちょ…なにさ帝人君。せっかく良い雰囲気だったのに」
「いえ、あの……その、」
真っ赤な顔で口篭る帝人に対して、臨也の理性は既に限界だった
(あんな風に反応されて、なにも感じない方がおかしいって)
本当なら今すぐにでも帝人を押し倒して事に望みたかったが、そうすると最低でも二日は口を聞いてもらえなくなる
だから脆い理性をなんとか保ちながら、帝人の言葉を大人しく待った
そんな臨也に帝人は、おずおずと小さな口を開いて呟いた