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幻惑の翅

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ふいに、臨也が静雄の胸にどんと両手を押し当て、ぐいと背を伸ばす。
仰け反るのど元、サラリと舞った黒髪、ほんの一瞬その背に黒い蝶の翅が見えた気がして静雄は瞬く。肩先を離れた顔は俯き加減でやはり眼だけが、髪に隠されて見えない。
「シズちゃん、それは幻だよ。俺は、君の敵だろう?」
必死に言い募る臨也に、違う、目を合わせない臨也の頑なさにもどかしくなって、静雄は臨也の後頭部に手を回した。
「臨也……」
一気に引き上げて眼を覗き込む。きつく瞑られた臨也の瞼はほんのりと朱に染まっていた。
「何で手前はさっきから俺を見ないんだ?」
「見たくないからさ、ね、シズちゃん。俺は君の敵だろう?」
何処までも、臨也は静雄を拒むつもりなのだとその声は告げる。
欠片ほどもお前に与えるものはないと、そうして貫く意志を、唐突に静雄は抉じ開けたくなった。
ほんの少しの予感だったはずなのに、覚悟をしろというのなら今この瞬間、心を一挙に巣食った渇望が堰を切るように。
静雄は臨也の瞼を舐めて、舌先で眼球を翻弄した。
「っつ」
漸く現れた紅い瞳は涙を溢れさせながら、呆然と静雄を見る。
強く蹂躙するよう臨也の瞳に、この餓えを焼き付けてやろうと見据えて。
「黙れ。もう遅い、な?手前は黙って俺に喰われろ」
臨也のあらがいを叩き壊した。
愛とかそういうんじゃ足りねぇんだとうそぶきながら。
作品名:幻惑の翅 作家名:深那