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空の名前

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「確認したらすぐにでも連絡してやる。そのためにわざわざ最新型を渡してやったんだからな」
ビリーは彼の胸ポケットに入れてあったキムラ製の携帯端末を指差した。迷宮機関で使用されていた技術を応用した、まだ市場には出回っていない物をペニーに渡したのはそんな時のためだ。
もっとも、その新しいタイプの電話はまだ市民には浸透しておらず、電話が鳴るのはビリーか迷宮機関で出会った人々に限られていたが。
「いつでも出れるようにしてろよ」
偉そうに、と言いかけた言葉をペニーは言わないことにした。

Out Of Place Artifacts(オーパーツ) と呼ばれる、いわゆる場違いな工芸品の一部が中国で発掘されたと聞いたのは僅か数週間前だった。それが宇宙船のような構造をしていると聞かされたとき、まさかと思った。
自分たちの考えが正しければ、彼女はその時代に生きたはずだ。
痕跡を見つけて、自分はどうするのだろうか。
ただ、彼女を探すことに必死だったペニーはその連絡を受けて初めて自分に問うた。
最後の、彼女の後姿ばかりを思い出す。あの時の選択を、彼女は後悔していなかっただろうか。
自分は、彼女を救うことが出来たのではないか。
もっと別の方法で。
あの日の自分に対して後悔の念ばかりが押し寄せる。
常に持ち歩いている携帯端末はあれから一度も鳴ることなく月日ばかりが過ぎた。
答えは見つからないまま、ただ日々を過ごす。
ようやく電話が鳴ったのはそれから一ヶ月も後だった。相変わらず雑音の多い電話に、彼は新型を開発中だと相変わらずの口調で返した。話している間に彼の瞳が輝き始める。ワシントンはじっと、彼の顔を眺めていた。
急いで電話を切る。手早く机の上に広げていた荷物をまとめて愛用のリュックに入れると、彼は立ち上がった。
「行くぞ、ワシントン!」
それに答えるように一吠えしたワシントンは、走り出した彼に続いて部屋を飛び出した。


the end
作品名:空の名前 作家名:ナギーニョ