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あるお姫様の話

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昔々、あるところに、世界中の全てを憎み、全てを不幸にしようとするお姫様がいました。そのお姫様はイースといいました。イースは本当に全てが大嫌いで誰にも心を開きませんでした。
 イースのそばにはいつもウエスターという騎士がいました。ウエスターは明るく優しく、いつもイースを守るためにそばにいました。イースはそんなウエスターのことも大嫌いでした。
 ある時ウエスターは同じ騎士のサウラーと一緒にイースの散歩の警護をしていました。イースはやっぱりつまらなそうな、憎々しげな顔をして泉の袂を歩いていました。泉のたもとには小さな可愛らしい花のつぼみがありました。イースはそのつぼみを憎々しげに見つめると、思い切り踏みつけます。ウエスターはそんなことはしてはいけない、とイースを優しく窘めるとイースはウエスターのほほを叩いて言います。
「私になれなれしくするな」
 ウエスターはそんなイースがかわいそうでした。ウエスターにはイースのその表情がいつも寂しそうに見えたからです。
 イースはある時両親である王様とお妃さまに連れられて隣の国へ行きました。隣の国にはイースと同じくらいの年のお姫様がいました。そのお姫様はイースとはまったく逆でした。全てを愛し、全てを幸せにしたいと思っているいつも笑顔のお姫様でした。イースは国のためにそのお姫様と仲良くしていましたが、心の中ではいつも憎らしく思っていました。ウエスターは隣の国のお姫様と遊ぶイースを心配そうに見ていました。お姫様はイースを大切な友達に思っていました。イースになんでも正直に打ち明け、イースの偽りの笑顔を信じていました。
 イースは国の民に嫌われていました。イースはそれでもよいと思っていたので平気でした。イースも同じように国民を嫌っていたからです。いつもつまらなそうに人を見るイースは隣の国のお姫様とウエスター以外の人にはいつも怖がられ嫌われていました。そんなイースを王様もお妃さまも嫌っていました。笑わない冷たい心のお姫様を愛してくれる人はほとんどいませんでした。イースは大きなお城の中で一人ぼっちでした。
作品名:あるお姫様の話 作家名:こまつ