あるお姫様の話
ある日のことです。イースの14歳の誕生日のこと。イースは遠い国の顔も知らない王子様と結婚させられることになりました。イースはそれでもよいと思いました。どうせどこにいっても、イースにとっては大嫌いな世界に変わりはなかったからです。王様もお妃さまもイースが出て行ってくれてせいせいしていました。イースの出国の時に一緒に来てくれたのはたくさんの荷物とウエスターだけでした。
遠い国へ行く途中に隣の国に立ち寄ることになったイースは一応お姫様にも会いました。お姫様はイースが遠い国にいくと聞いて声をあげて泣きました。イースはびっくりしました。わんわん泣くお姫様にどうしたらいいかわからなくなりました。その時少しだけイースは思い出しました。お姫様と一緒に過ごした日々を。お姫様はイースに自分の大切にしていたオルゴールを手渡しました。どうかこのオルゴールの曲を私の声だとおもって聞いてね。お姫様はそういってまた泣きました。そのオルゴールはお姫様が本当に大切にしていたものだとイースは知っていました。そのオルゴールがお姫様の大切な人の形見だと知っていました。
隣の国を離れ長い道のりを旅しました。イースはその間ずっとお姫様から貰ったオルゴールを持っていました。オルゴールの音色は綺麗で、眼をつぶるとあのお姫様が歌っていた姿がまぶたに浮かびました。もうきっと会うことはないかもしれないお姫様の姿。イースは何故か今まで感じたことのない痛みを感じていました。その姿をウエスターは黙ってみていました。
その長い旅の途中です。イースたちは盗賊に襲われました。イースの乗っていた馬車に積まれていた荷物を奪おうとしたのです。綺麗な宝石や服が奪われ、イースも盗賊にさらわれそうになりました。盗賊たちはイースのもっていた綺麗なオルゴールも奪おうとしました。イースは何故か、そのオルゴールだけはと思い、必死に抵抗しました。剣がイースの背中を斬り裂きました。
「生意気な女め。そんなことだから王様にもお妃さまに俺たちが雇われたんだ。王様たちはこう言ったんだ、お前はどこにいっても誰も彼も憎んでいくんだろうから、死んだほうがマシだと」