桔梗
乱太郎サイド
乱太郎がその事実を知ったのは、森の友人たちからだった。
友人と言っても、人ではなく動物たちだ。森の近くで何かあれば知らせるようにしてあった。獣の森と呼ばれる森はそこかしこにある。乱太郎はその動物達とコミュニケーションを取るこてが可能となっていた。その筆頭が狼のイクと梟のヤミだった。二匹は野生ではあるが乱太郎に仕えていた。それぞれが狼と梟の王。だからこそ、乱太郎にはその眷属は従う。
「庄ちゃんが捕まってるの?」
「ぴぃ」
「伊助と、三ちゃんと兵ちゃんは無事なんだね?」
「ぴぴぃ」
「そっか…」
伝えにきたのは、スエと名前の付けている子梟。
「山賊ね。あそこは子供たちだけで行くには危ないって知ってるはずなんだけどな」
今回は、学園側のミスだ。まだ、自分たちならば何かしらの幸運があるため誰かが助けてくれる。それは絶対と言っても過言ではない。自分だけでなく、きり丸としんべヱにもそれがあるのだろう。は組全員ならばもっと強いであろう。だが、今回はそれはない。
「…危険だな」
庄左エ門が心配だった。ならば、動くのは必然で。
「スエ、ヤミとイクにその山にくるように伝えて。後、ありがとって」
「ぴぃ」
スエは、羽ばたき去っていく。乱太郎は周りに人がいないことを確認し、一瞬で気配を消した。そして、闇色の忍服に着替える。そしてそこから消えた。それは風のように。教えてられた場所にいけば、庄左ヱ門だけが捕まっていた。他の三人は庄左ヱ門の機転により逃げることが出来たのであろう。だが、庄左ヱ門は足を挫いているらしく行動を起こすことも出来ないでいた。乱太郎は、庄左ヱ門をいや学園の子供を狙った山賊が気に入らなかった。
「…どうしてやろうかな」
殺すことはしないが、死んだ方がよかったと思うくらいはしてやりたいと思う。そう考える時点で、ああ自分は怒っているのかと認識した。
「私、思っているよりは怒ってるんだ」
友達を酷い目に合わせた事が許せない。そこに、知る気配が増える。肩にヤミ、背後にイクの気配がする。
「二人とも手伝ってくれる?」
イクもヤミも声を出さずに頷いた。主には絶対だ。それも敬愛する主であれば尚更だ。
「ありがと。じゃあ、動こうか」
風と共に三人は動きはじめた。
「そのまましゃべらずにじっとしいていろ」