桔梗
心配だからこそ、怪我をして帰ってくる乱太郎に軽く意趣返しみたいなもんをしているのだ。心配させたということで。
「乱太郎! キミだって保健委員なんだから、傷作っちゃダメ!」
「そうは思うんだけどねぇ…」
乱太郎がつけた傷は華乱のときのもの。手当できる状態ではないときの方が多い。特製の傷薬はすぐに効く特効薬。けれど、帰ってきたら保健室に行く方が早い。
「気をつけるから伏ちゃん、泣かないでよ」
「だって…」
手当が終わり、ぎゅーっと乱太郎を抱きしめる伏木蔵。乱太郎もそんな伏木蔵をポンポンと撫でた。そんな二人を数馬は笑って撫でる。
「そこまでな。乱太郎、庄左エ門を部屋に連れっててくれ。伏木蔵はオレとまだ当番だからな」
「はい、数馬先輩」
「わかりました。庄ちゃん、行こう?」
「あ、うん。三反田先輩、伏木蔵、ありがとうございました」
お礼を言って、二人は保健室を出る。
「庄ちゃん足は大丈夫?」
「大丈夫だよ」
乱太郎といると落ち着く。なのに、どうしてだろう。華乱を思いだしてしまうのは。
「乱太郎」
「ん? 何、庄ちゃん」
「怪我…大丈夫?」
「うん、何ともないよ。かすり傷」
「ならいいけど…」
「私より、庄ちゃんのが重症なんだからね!今日は安静にしとくんだよ?」
「わかっている」
「本当? 庄ちゃん結構突撃タイプなんだから」
「それは」
「ないってことはないでしょ? 冷静なタイプって結構キレルと突撃するものだよ?」
「うう…」
珍しく乱太郎に言いくるめられた庄左エ門は深くため息だ。部屋につくとそこに伊助がいた。
「伊助」
「乱太郎? なんで?」
「怪我して保健室いったら庄ちゃんと会って。で、連れてきたの」
「…また怪我したの?」
「あー。うん」
伊助は乱太郎がこの頃よく怪我しをしていることを知っていた。その現場もいたことがあるのだ。
「伊助、庄ちゃんのこと頼むね」
「うん」
乱太郎が出ていこうとする。それを庄左エ門も伊助も服を引っ張て止める。
「伊助? 庄ちゃん?」
「乱太郎、もう少しここにいないか?」
「お話しない?」
乱太郎は思う。今日の出来事に所為で少し不安なのだろう。この分だと後で兵太夫と三治郎のところも寄った方がよさそうだった。
「わかったよ。もう少しいるから。そんな泣きそうな顔しないで? 二人とも」
「…うん」
「そうだね」