桔梗
まだ、乱太郎が華乱とばれる前のお話。
乱太郎ときり丸としんべヱは、三人仲良くお使いをしていた。
「なあ、乱太郎、しんべヱ」
「なあに?きり丸」
「どうしたの?きりちゃん」
きり丸が二人に話し掛ける。
「珍しく、お使いで何事もなかったし、ちょっと寄り道してかないか?」
「寄り道?」
しんべヱは、不思議そうに首を傾げる。乱太郎は近くの山ときり丸の顔でピンとくる。
「きりちゃん…、もしかして」
乱太郎の言葉にきり丸もにししと笑った。
「あ、ばれた?」
「なーに?僕だけわかんない!」
「しんべヱも怒らないで。ちゃんと説明するから」
乱太郎は苦笑して、きり丸のいいたいことをしんべヱに説明する。
「この近くの山に薬になる薬草がたくさんあるの。きり丸はそれをとりたいんだよ」
「ご名答!さっすが乱太郎」
「でも、今から山に入るのは危なくないの?」
しんべヱのいう事も正しくて、今から入れば門限ギリギリな時間になってしまう。
「そんな奥までは入らないから。それに入り口の方までしかいかない。約束する」
きり丸の言葉に二人はしょうがないなぁと顔を見合わせて応える。
「「しょうがないから、手伝ってあげる!」」
「ありがとな!」
乱太郎もしんべヱもきり丸もそれぞれが笑う。これがいつものことなのだから。ただ、乱太郎には少しだけ不安もあった。入る山は獣の森。あまり、人が立ち入る場所ではない。
『ヤミたち呼んでおいた方が良さそうだ』
念には念を。それが忍者としての鉄則。自分だけならばいいのだが、二人と一緒ということは勝手な動きは出来ない。ただでさえ、まだ二人には自分が消えてしまうかもという不安があるのだから。
『しょうがないか』
二人が山に向かう後ろで、音なき音を口笛で吹き合図を送っておく。遠くから遠吠えと甲高い声が聞こえた。
「おお〜、入り口から大量だぜ!」
「きり丸、これで間違いはないんだよね?」
「ああ、だからたくさんたのむぜ!」
既に目が小銭状態のきり丸は奥へ奥へと進む。乱太郎は、危ないなぁと思うが、しんべヱを一人にすることも不安だった。
「…あー、もう」
気が付けば、きり丸の姿がない。
「あれだけいったのに」
「乱太郎〜、きり丸は?」
「中に入っちゃったよ」
「ど、どうしよう〜」