桔梗
いつも一緒だから気がついたこと
同じ部屋、教室で、授業でずっと過ごしているから、感じる事がある。それはきり丸もしんべヱも同じで。そうもう一人の同級生の乱太郎の事だ。いつも一緒だから。
「…二人とも、何を見つめてるのさ。穴飽きそうなんだけど?」
「なあ、乱太郎」
「何?」
「お前、こんな所に怪我なんてしていたか?」
きり丸が指さしたのは、額にあった小さな傷。昨日はなかったと思う。
「後、こっちの傷もなかったよ?」
しんべヱがさしたのは、手の甲にあった擦り傷。
「これ?昨日、夜に廁にいくときにこけちゃったんだよ。それで出来たの」
「また、こけたの?メガネは?」
「寝呆けてたから、また忘れちゃった」
えへへと笑う乱太郎に二人は少しだけ不安になる。
「…本当に、それだけだよな?」
「うん、二人だって私がドジなこと知ってるでしょ?」
「知ってる。不運だってことも知ってる」
「なら、何をそんなに気にしてるのさ」
「なんでかな」
「なんでだろ」
二人は首を傾げる。この頃、乱太郎が少しだけ遠くに感じてしまうことがあって、それが寂しいのかもしれない。
「な、乱太郎」
「ん? 何、きりちゃん」
「オレ達、ずっと一緒だよな」
「そうだね、一緒だね!」
「どこまでも?」
「どこまでも」
「ずっと?」
「ずっと」
乱太郎は安心させるように、二人の手を握って走り出す。
「何をそんなに心配しているのかはわかんないけど。私は二人の横にいるよ! だから、先にも後にもいかない。隣にいるだけだよ!」
「ああ」
「うん!」
やっと笑う二人に乱太郎も笑う。
『…どうしたもんかな』
乱太郎は二人の様子を見て少しだけ考える。
ずっと一緒にいるからこそ、二人は他人がわからないことも気がつく。手の甲や額に傷は昨日の忍務でついた傷。返ってきたのが明け方だったこともあり隠すことが出来なかった。けれど、その傷も目立つことはない。それを気がついてしまった二人はそこまで乱太郎のことを見ているということになる。
『…隠し通すことは可能だけれど、無理なことをすればすぐに綻びる』