夢現
泣きながら飛び起きると、そこは見慣れた自分の部屋だった。
机、カバン、昨日脱いでそのままにしたパーカー、全部全部自分のものだ。
青葉は流れる涙はそのままに、ゆっくりと息を吐き出して肩の力を抜いた。
夢を見た。
悲しい夢だった。
いつか現実になってしまうかもしれない夢。
けれど、現実になるとは限らない。
夢の中、最後に帝人はこちらを振り返ってくれた。
夢は自分の願いや欲望を見せるというが、そんなことは関係ない。
振り返った後、青葉に対して笑ってくれたのか、それとも無表情に一瞥しただけなのか、それすらわからないが関係ない。
ただ、自分がこれから動けばいいだけだ。
帝人がこちらを見てくれるように。
正臣や杏里ではなく、自分を選んでくれるように。
いつか現実になってしまうかもしれない夢。
けれど、絶対現実になんかしない。
そう決めたけれど、涙は止まらないままだった。
外は暗い。
夜明けはまだ先のようだ。
携帯電話を取り出し、アドレス帳から彼の名前を探す。
しばらく考えて、メールを一通だけ送った。
『まだ起きてますか?』
繋がることを願って、青葉は横になり目をつむった。