軍服
イザークはアスランのつむじに唇を押し当て、肩を震わせている彼がとても愛おしく思った。
「アスラン、待ってられるな?」
それに、彼は微かに頷いた。
「迎えに来てやるから、それまでおとなしくしてろよ」
それにも、微かに頷く。
アスランはイザークの言葉を信じてみようと思い始めた。
もしかしたら彼なら本当にやってのけるかもしれない。
自分にはないものを持っている彼なら……。
またプラントの大地で、同じ目標に向かって歩いていけるかもしれない。
「あんまり、無茶なこと言うとできなかったとき恥かくのはお前だぞ?」
少し、泣きはらしたような顔を上げてアスランは微笑んだ。
「減らず口を叩く前に、せいぜい身辺整理ぐらいしておくんだな」
「なんだよ、それ?」
イザークは涙の痕が残る目尻へ唇を押し当て、労わるように軽くキスを何度も落す。
アスランは笑ってそれを受け止めるから、イザークも唇の端を上げて笑う。
赤服の頃からは想像もできないくらい、彼は成長していた。
未だに成長しきれない、同じ過ちを繰り返す自分にイザークはあの時と同じように手を差し伸べてくれる。
「お前が白になれた理由がわかったような気がする」
アスランはイザークの肩に凭れかかって呟いた。
「やっと、俺のすごさがわかったのか?この腰抜けっ!」
俺にないものを持っているお前は、きっといい隊長なのだろうな。
「でも、お前の部下だけはなりたくないな」
「なんだとーッ」
アスランはクスクス笑いながら、これから半年は地球で彼を待っているのも悪くないと思った。
「二人で勝手に話まとめちゃったよ」
「そのようですね」
ディアッカはこれから、また忙しくなるなーと遠い目をした。
そして、シホへ顔だけ向けて苦笑した。
「イザークって本当、顔に似合わず熱い男だよな」
「ディアッカは、外見は熱いけど中身は冷めてますよね」
二人はなんとなく言い合って、同時に噴出した。
「これから、またイザークに振り回されるんだぜ、俺ら……」
「私は隊長に付いて行くとジュール隊に入ったときから決めてますから」
二人はこれから、忙しくなるに決まっているんだから、せめてプラントへ着くまではのんびりしようと思った。
END