トランバンの騎士
ボルガノの剣を剣で受け止めることも無く、イグラシオは攻撃を避け続けながら考えた。
自分の罪。
それは領主への恩に目が眩み、騎士道を隠れ蓑にボルガノを放置してきたことだ。
そして、本来恩がある領主はボルガノではない。
恩があるのは自分を現在の養父に紹介し、引き取らせた前領主だ。彼のおかげで、自分は孤児院出身であるにも関わらず、騎士などという立派な職につくことができた。彼が自分にとって何者であったのか、『噂』は聞いたが『真実』は知らない。ただ彼と同じ銀色の髪は、自分の誇りでもあった。
その大恩ある前領主の息子に剣を向けることは確かに罪なのかもしれない。
が、自分の罪は違うところにある。
自分の罪は――
「私の罪は、忠義にとらわれ、正義を見失っていたことだ!」
何度目かになるボルガノの剣を避け、イグラシオは一気に間合いをつめた。
今の自分がボルガノの為に出来ることは、せめて『苦しまぬように』一撃で『送って』やることだけだろう。
イグラシオは大きく剣を振り上げ、ボルガノに瞬く間を与えずにそれを振り下ろした。