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きみのなかに

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私が選びますけどね。冗談のように言って、日本は早くしないと、と物置に入っていった。
日本は、本当に感情を汲む、ということに長けていると思う。勝てないな、と頭を掻いていると。
「ああ、そうそう」
ひょい、と顔を覗かせ、イタズラっぽく日本が笑った。
「あなたのところの倉庫掃除、私でよければ、いつでも手伝って差し上げますよ?」
「!」
片付けきれないことが、バレている。埃を被らせたまま、ずっとそのままの倉庫。
日本のように、まだ整理が出来ない。こうやってたまに出すことも、まだ難しい、それを。
「また今度ね!」
オレも笑って、答えた。いつかは、思い出になってしまうだろう。それは時間が解決してくれるはずだった。あと、隣にいてくれる、優しい隣人。
「ハイハイ。じゃ、それ外に運んでください」
「オッケー!」
腕まくりの真似をして、物置に入る。半分ほど葉っぱになった桜が、小さく揺れて見下ろしていた。
作品名:きみのなかに 作家名:浅平夏晴