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ラーメン食おうぜ!(仮タイトル)

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 素直に頷く佐久間を見て、今度は他のやつらも一緒に連れて来ようと思った。
「あ……そうだ」
 少し先を歩いていた佐久間が足を止めて振り返る。
「風丸って、円堂と付き合ってるのか?」
「……ッ、なにを、急に……?」
 思いがけない言葉に思わず咳き込み、さっき食べたばかりのラーメンが逆流しそうになった。
 付き合っているかと聞かれたら――多分、おそらく、十中八九、そうなのだろう。
 ダークエンペラーズの一件があった数日後に円堂の家に呼ばれて円堂から「風丸が好きだからこれからはずっと一緒にいてくれ」と伝えられ、半泣きで「オレも」と返したのだからきっとそうだ。
「違ったなら悪い。けど、もしそうなら一緒だと思ったんだよ」
「……一緒?」
「オレ、源田と付き合ってるんだ」
「え!?」
 源田と? そう叫びそうになるのを堪える。
 佐久間といえば常に鬼道の側に寄り添い、鬼道に尽くしているイメージが強い。その献身的な姿といったら、佐久間の鬼道への想いは友人としてのそれを超越しているのではないかと誰もが疑うレベルだったというのに――
「オレ、お前は鬼道のことが好きなんだと思って……」
「お前もそう思ってたのか。よく言われるけどな」
 よく言われるも何も、誰がどう見てもそうだろう。流石にそれを言うのは源田が不憫であると思い口を噤んだ。
「鬼道のことは本当に尊敬してる。今でも、追いかけてる。でも、それと恋とは違うだろ?」
「そう、だったのか……」
 今知らされた衝撃の新事実を飲み込もうと、風丸はゆっくり返事を返した。
「で、お前は? 円堂とは?」
「多分付き合ってる」
「多分ってどういうことだよ」
「一応、そういう話にはなったんだけど円堂ってみんなと仲いいし、特にオレとの関係変わったわけでもないしな」
「そうか? オレには、円堂にとって風丸は特別に見えるぞ」
 佐久間はそういって笑い、風丸の肩をつついた。
「どこがだよ、って、あ」
 道の向こう側に、見覚えのある姿があった。
「おーい! かーぜーまーるー! どこ行ってたんだよー!」
 ぶんぶんと両手を振りながら近づいてくるその人物は、紛れもなく今まで話の中心にいた円堂守だ。
「ほら、やっぱ特別だろ」
 してやったり、とにやにや笑っている佐久間を見るに、佐久間は少し前から円堂がこっちに向かっていているのに気付いていたのだろう。
「風丸! って、佐久間と一緒だったのか!」
「ああ、ちょっと一緒に雷々軒に行ってきたんだ」
「おい、円堂急に走るなよなー」
 円堂の後ろから、綱海が文句を言いながら付いてきている。
「お、風丸に佐久間じゃん。珍しい組み合わせだな! なんか可愛いぞ!」
 綱海は遠慮なく、並んで立っている風丸と佐久間の頭をぐしゃぐしゃと撫でた。普段であれば男にかわいいなんて言われても腹が立つだけなのに、なぜだか綱海だと許せてしまう雰囲気がある。それは佐久間も同じらしく、少し俯いて顔を赤くしている。
「佐久間? 顔あけーぞ。具合悪いのか?」
「え、あ、違、あんまり、その、慣れてないから……」
「?」
 佐久間の言っている意味がわからない、ときょとんとする円堂と綱海に向かって風丸が言葉を付け足した。
「触られたりするの慣れてないからどうしていいのかわからなくて照れてるんだよ」
「お、そっかー。帝国学園っていうのはあんましノリノリじゃねーってことだな」
 校風もあるだろうが、佐久間は帝国学園サッカー部では参謀と呼ばれる位置にあり、今では部をまとめあげる存在だ。そんな佐久間であるから、綱海のするようなスキンシップを受けることは今までほとんどなかったのだろう。
「じゃ、オレも」
 佐久間が大人しくしているうちに、と風丸も綱海の触れている佐久間の頭へと手を伸ばして触れてみた。
「ちょっ……なんで風丸まで……!」
「じゃあオレもオレも!」
 円堂までもが手を伸ばし、佐久間はいよいよどうしていいかわからない様子で固まっている。
「佐久間の髪ふわふわしてるな!」
 確かに円堂の言う通り、佐久間の髪はふわふわとしていて触り心地がいい。
「あ、そーだ! オレたち今から鉄塔の方で練習するんだけど、お前たちも来るか?」
 円堂は佐久間の髪の感触がよっぽど気に入ったらしく、相変わらず佐久間の髪をぐしゃぐしゃにしながら聞いてくる。後でシャンプーの銘柄を聞いておこう。
「円堂、髪、髪引っ張ってる」
「あ、すまん佐久間」
「でもなあ、オレたち今食ったばっかりだからあんまり相手できないぞ」
「いーっていーって! 綱海とやるから」
「そうそう。今日は一緒に練習するって決めたんだぜ」
 自分は構わないが佐久間はどうだろう、と振り返ってみる。
「オレは……行ってみたい」
「ん、じゃオレも行く」
「やったー! じゃ、オレと綱海は特訓しながら行くからお前たちは腹痛くなんねーようにゆっくり来いよ!」
 円堂は来たときのようにぶんぶんと手を振りながら、鉄塔のある方角に向かって走っていく。綱海も円堂に負けないくらいの笑顔でそれを追っていった。
「どうだ? 佐久間。なじめそうか?」
「うん。楽しいな、こういうのも」
 そう言って微笑んだ佐久間の表情はラーメンを食べに来る前よりも少しだけやわらかで、勇気を出して誘ってみた甲斐があったと思う。
「あ、そうだ佐久間」
「ん?」
「シャンプーなに使ってるか教えてくれ」
「聞いてくると思った」
 じゃあ競走に勝ったらな、と言いつつ走り出す佐久間を追いかけながら、あの日この道を選んだことは間違いじゃなかったと、そう思った。