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「 拝啓 」 (5)

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『あ、帝人君!良かった繋がった…心配したよ』
「新羅さん……ごめん、なさい」
『いいんだ…それでさ帝人君』


どくん、と心臓が音を立てた
携帯電話を握り締める力が強くなる
咽喉が渇いて乾いてしょうがなかった


「…は、い」
『ニュースは、見た?』
「…なん、の…ですか」
『……その様子じゃ、知ってるみたいだね』


いつもよりも幾分低いトーンで話す新羅さんは、電話の向こうでどんな顔をしているのだろうか
そんな馬鹿みたいなことを考えていた僕に、新羅さんは 告げる
眼を背けていた、現実を




『帝人君、』


『海外で起こった飛行機事故……あの飛行機には臨也も乗っていった』


『君もそれは知って……いるんだろう?』




息が出来なかった
酸素が足りなくて、大きく口を開けても上手く空気を吸えなかった
視界が霞んだ、視界が歪んだ
頭が痛くて痛くて吐きそうだった




『……落ち着いて、聞いてね』
「しんら、さ……やめてっ」
『…帝人君、』
「やだ、やだ…聞きたくない、ききたく…ないっ」


聞きたくないのなら、通話を切ることだって僕には出来た
それでも切ることをしなかったのは、


聞かなきゃいけないって、分からなきゃいけないって、知らなきゃいけないって
きっと、僕の奥底が理解していたから


それを新羅さんも分かっていたんだと思う
だから僕が落ち着くまで電話越しで待っていてくれたんだろう
あの人は、優しい人だから


「……ごめ、なさ…っ、新羅、さん」
『いや、しょうがないよ。大丈夫かい、帝人君』
「は、ぃ……」
『帝人君、臨也は………』











臨也は、もう   ******










その時、世界が真っ暗になって


同時に、なにかが壊れる音が、聞こえた気がした





***



――眼が覚めた時、僕は真っ白いベッドの上に横たわっていた
新羅さんが微かに涙声でなにか言ったまでは覚えているけど、それからのことはまったく覚えていなかった


なんとなく見たことがある天井をぼんやりと見つめると、起き上がって辺りを見回す
どうやら新羅さんの自宅らしい
でも、どうしてここで寝てたんだろう
覚醒しきれていない頭で、枕元にあった携帯電話を掴んで日付を見た


新羅さんと電話をした日から、二日経っていた








とりあえずベッドから降りようと思ったら、丁度新羅さんが部屋に入ってきた
起きた僕を見て、眼を見開いて僕のところに駆け寄って両手を握って、「良かった、本当に良かった」と何回も言っていた


「新羅さん、僕はどうして…」
「…急に通話が切れたからさ、心配になって臨也のマンションに行ったんだ」


そうしたらソファーの上で気を失っている僕がいた、らしい


「……ごめん、なさい。迷惑…掛けてしまって、」
「ちっとも迷惑なんかじゃないよ。それよりも、帝人君……君は、」


いつもと違う、不安げな眼差しで僕を見る新羅さん
そんな眼で僕を見る理由は、分かっている


「………大丈夫、ですよ」


だから安心して欲しくて、僕は笑った(つもりだった)


大丈夫、覚えてますから
ちゃんと、ちゃんと、分かってますから
知ってますから




(世界はなんて、残酷なんだろう)




呼吸は楽だった
視かいはゆがんでいた、新らさんのかおがよく見えない
あたまは、いたくなかった、けど


なによりも、  心   がいたかった




それでもぼくは、りかいして(しまって)いた










「……いざやさん、しんじゃったんですね」










(ほらもう、あの人の声が遠いよ)





作品名:「 拝啓 」 (5) 作家名:朱紅(氷刹)