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【9/19発行予定】憧憬パラノイア【サンプル】

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『憧憬パラノイア』(臨也と波江)

(中略)
「とうとう死んだのかしら」
 殺されてもおかしくない、其れだけ臨也は色々なものに首を突っ込んでいるし、色々な処で恨まれているだろう。
 死体の第一発見者なんて御免蒙りたいわねと、他人から見たら無慈悲なことを思いながら波江は臨也の個室の戸をノックする。やはり返事は無い。一応「開けるわよ」と断ってから部屋を開ければ予想通り、臨也はいなかった。
「出かけるなら出かけるって云って行きなさいよっ。ホウレンソウってよく云うじゃないっ」
 乱暴に戸を閉めると、波江は仕事部屋に戻りどかりと椅子に座る。
「あいつがいない間にもし面倒なことになったら絶っ対に、本っ当に本当に、其れ相応の見返りふんだくってやるっ」
 きーっと云わんばかりに波江は憤慨し、机の上に置いていた幾つかのファイルを手に取ると机に叩きつけた。其の拍子に、一枚の紙がふわりと舞ったのだが、怒り心頭に発している波江は其れに気付けないでいた。
  ○
(中略)
「自我と肉体の切断は不可能、少なくとも生きてる間は無理、だなぁ……」
 そう口に出してみて、やっぱり煩わしいと思うと、臨也はふっと力無く嗤う。
少しでも、日常から離れたくて、少しでも自分のことを知る誰かがいない処へ行きたくて、そして、少しでも自分のことを忘れてみたかった。
 他人を陥れてやろうとする自分と何処かで後ろめたさを感じる自分、己を糾弾しようとする自分と己を正当化しようとする自分。そういったあらゆる自我が、意識という次元で常に拮抗している。
 全てひっくるめて其れが「自分」というものだが、そんなたくさんの「自分」を少しでも忘れたいといった衝動に駆られることが稀にある。
 日常から離れて、誰も自分のことを知らない人間だらけの場所に行けば、ふっと一瞬でも忘れられるのではないか、そう期待して、時折こんなふうに部屋を出て遠くまで来てみるのだが、「折原臨也」というものは臨也にぴたりとくっついて、何時も通り、切り離すことは出来なかった。
 其れが分かり、期待してはいなかったものの、やはり落胆は免れず、小さく息を吐いて臨也は腰を上げる。レストハウスを出て渚へ向かいながら腕時計を見た、もうすぐ十四時半になる。
 今頃如何しているかしらんと、臨也は波江のことを思った。きっと何時も通りてきぱきと事務作業をこなしていて、さすがにもう自分が残してきた書置きには随分前には気付いていて、馬鹿だのくだらないだのと自分のことを一笑に付したのだろう。
 そう思うと、何だか其れはすごく波江らしすぎて可笑しく、臨也はくすりと笑いながら、渚へと架かる橋を渡り始めた。




他二編を収録