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はやくおいで、君を飼うための檻は用意してある

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これは俺たちだけの秘密だよ。

あの人に言われた通り、僕らのことは誰にも言わなかった。

だって、そうしたら外の世界に連れて行ってくれるって、あの人が、イザヤさんが約束してくれたから・・・。


◆◇◆◇◆◇◆


「遅刻だ遅刻!!!」

僕は慌てて森の中を駆けていた。待ち合わせの時間はとっくに過ぎてしまっている。きっとイザヤさんはもう着いて僕を待っているだろう。ちゃんと約束した時間に間に合うように家を出たのにマサオミに捕まってしまいこんな時間になってしまったのだ。
これ以上イザヤさんを待たせるわけにはいかない・・・。
そう思いつつも僕は走りながら後ろを振り向き、誰の姿もないことを確認する。ふわふわとした白い毛に包まれた長い耳をピンと立てて周りの音に集中しても、僕以外の足音は聞こえなかった。どうやら本当に誰も僕のあとをつけてはいないようだ。
家を出た後にマサオミに見つかった時はどうなるかと思った。最近、僕がどこかに行っていることを怪しく思い始めたらしく、逐一僕に構ってくるようになった。
今日はマサオミがナンパに精を出し始めた隙になんとか離れられたけど油断はできない。マサオミは猫だから木に昇ることが得意だ。木の上にも注意を払うが、特に不自然な音は聞こえなかった。
よかった、イザヤさんと会っていることはマサオミにだけは絶対に知られちゃいけないんだ。
後ろの気配に注意を払いながら、僕は前を向いてイザヤさんが待っているだろう森の外れ、森の住人である僕たちが行くことを許されているギリギリの境界線まで急いだ。


「このあたりのはずなんだけど・・・」

周りを見渡してもイザヤさんの姿はなかった。もしかしたら待ちくたびれて帰ってしまったのかもしれない。イザヤさんを待たせてしまったことへの申し訳なさと会えなかったことに対するからさっきまで立てていた耳がしゅんと前に垂れる。
それでも諦めきれずキョロキョロとイザヤさんの姿を探しながら走っていると、いきなり黒い影が視界を覆った。突然のことに足を止めたけど走っていた勢いを消すことができずそのまま影に突っ込んでしまった。
その後来る衝撃に目を閉じるが、訪れたのはぽすんという音と柔らかく温かい感触だった。そしてからかうような声。

「ちゃんと前見てないとこの前みたいに怪我するよ?」
「イザヤさん!!!」

顔を上げてその声の主を見ると、僕や正臣みたいに頭の上に毛に覆われた耳を持たない『人間』であり、会いたくてたまらなかったイザヤさんが僕の身体を抱きとめていた。

「よかった、ちょうど君のこと探しに行こうとしてたところだったんだ」
「えっ、だめですよ! イザヤさんこれ以上森の中に入っちゃみんなに見つかっちゃいます!」
「うん、でもミカドくんがあまりにも遅かったらね。来る途中で何かあったんじゃないかって心配で」
「す、すみません・・・。家を出てすぐにマサオミに捕まっちゃって・・・」

さすがにこの体制のまま話しているのは失礼だと思ってイザヤさんから離れようとしたけど、思いの外しっかり僕を抱いていてそれはできなかった。イザヤさんは気にするようでもなくそのまま話を続けている。

「マサオミ、って前言ってた猫の?」
「はい、僕の友達なんですけど、最近僕が一人で出歩いてるのを怪しく思っているみたいで・・・」
「ふーん・・・、ミカドくんの友達なら一度会ってみたいね」
「それこそだめですよっ、だってマサオミは人間が嫌いですから・・・」

実はマサオミは一度人間に連れ去られそうになったことがあった。マサオミが一人だけでこの森の外れに遊びに来ていたときに運悪く出くわしてしまったらしい。正直俊敏なマサオミが捕まったなんて信じられなかった。でも帰って来てからマサオミは(隙をついてどうにか逃げだせたらしい)それから僕に絶対に人間に近づくなと大人たちと同じことを僕に言うようになった。そして今まで僕と二人でどこにでも遊びにいていたのに、森の中心から離れた場所にはいかなくなった。

「いいか、ミカド。人間ってやつは狡猾で卑怯な奴らなんだ。俺たちを見つけたら甘い言葉で近づいてくる。でもそれは俺たちを捕まえるためだ、そのあとは檻に入れられて見世物にされたりひどい扱い受けるんだからな! だから絶対に奴らに近づくんじゃないぞ?」

マサオミは僕を怖がらせようといかに人間が恐ろしいかこと細かく説明した。でもマサオミのその話は僕の好奇心を掻き立て、人間に対する興味を煽るだけだった。そして、遠くから見るだけなら大丈夫だろう、とマサオミが人間と出くわした場所に僕一人だけで向かった。もしかしたらマサオミをまた捕まえようと探している人間がまだいるかもしれない。
でもそんな安易な考えは自分も人間に見つかってしまうという結果を導いてしまった。足をひねって走れないという最悪な状態で。仮に走れたとしても僕の脚力で逃げ切れたかどうかはわからないが。

(どうしようどうしよう! 捕まっちゃう・・・!!!)

今更マサオミから聞いた人間の話を思い出し、混乱と恐怖に震えていた僕に投げかけられたのは・・・。

「・・・・・・君、大丈夫?」

という僕にとっては意外な言葉だった。