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八十一

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「ボクはキミみたいな人は嫌いだよ」

 放たれた言葉はまさに矢の如く。
一方を傷つけるだけ傷つけて放った本人は、自らが放った矢の事など気にはしない。それを言うだけ言って松野は踵を返した。
だが去る者を追いたくなってしまうのは人の性、というか、吹雪は人が去ってしまうのを極端に嫌うのだから仕方が無い。思わずその腕を掴んでしまった事も。

「どうして?」

 至極、単純な質問だった。何故なら理由がさっぱりと見当たらないからだ。
 フットボールフロンティアインターナショナルの開催が決定され、また雷門中へと回収された吹雪はそこで初めて彼とまともに会話した。
初めて邂逅したのは衝撃的すぎる再開の最中で、吹雪も松野もお互いそれどころじゃなかった。
吹雪自身は松野や半田ら雷門中のメンバーにきちんと挨拶をしておきたかった。だからFFI日本代表選考試合の前に挨拶しようと思っただけだった。ちょうど同じチームだったのも良い機会だった。挨拶の仕方は特に問題なかったと吹雪は思う。よろしく、と言って握手を求めただけだ。だが、松野は握手には応じたものの一切笑みを見せるわけでもなく、言い放った。嫌いだと。

「どうしてって。理由は別に無いんだけど」
「理由も無く嫌うの?」
「生憎だけど、僕は嫌う事に理由付けするなんてめんどくさい事はしない主義なんだよね」
「めんどくさいの? 嫌うのにも?」
「そう。めんどくさい」
「じゃあ、今僕と話するのも?」
「うん、まあ、若干めんどくさい」
会話は逐一Q&A形式で行われ、吹雪は思った疑問を口にするだけして、松野も思った事を回答にした。
「そう……残念だな」
吹雪はひとしきり疑問を答えてもらうと腕を放した。
「………キミは、嫌われてる相手に好かれようとはしないんだね?」
今度は逆に松野がポツリと質問する。
「しないよ。だって、君は僕を嫌っているのだからそれを無理に変えようとするなんて、ますます嫌われるだけだもの」
「………そうだね。だから、僕はキミみたいな人が嫌いなんだよ」
松野の言葉は吹雪よりも自分に向けているようで、吹雪は目を丸くするしか出来なかった。吹雪が次の言葉を捜しているうちに響木監督が集合の号令を出した。話はいったんそこで流れ、そして保留となった。

その日、吹雪は選考試合により日本代表に選ばれ、そして松野は、落ちた。



「僕、松野君に何かしたのかな……」
「思い当たる事はないんだろ?」
「うん」
「じゃあ、マックスの気まぐれ」
「気まぐれ?」
「あいつは猫みたいな奴だから」
お前みたいにな、そう言いながら。風丸は自分からは逆さまに見える吹雪の頭を撫でた。吹雪の頭は今まさに風丸の膝を独占していて、ついでに二人で円堂のベッドも独占している。
自分の部屋だと言うのにベッドも恋人も取られた円堂は、勉強机に備えられた椅子に座るしかなく、背もたれを腹で抱えるようにして逆向きに座った。
イナズマジャパンの寮生活が始まって一週間程経った。練習詰めの一週間に7日目にしてようやく休養日が与えられ、皆身体を休めた。実家に戻る者も居たが実家に戻るより二人きりの時間を取りたかった円堂と風丸は、少し静かになった寮に残った。が、知ってか知らずか、吹雪が尋ねてきて何も物申さず有無を言わさず風丸に抱きついた。
吹雪の風丸に対するそれは恋愛感情ではなく、ただの友人に対するスキンシップでもなく、ありていに言えば子が母に甘えるようなそんなあいまいな感情だ。それは円堂もよく知っている。だからこそこうやって静観出来る。吹雪以外だったら部屋から投げ飛ばしているが。
 そして吹雪がそういう態度を取る時は大体染岡絡みの事が多いのだが、今回は違った。不意に一週間前の松野の態度を思い出したのだという。
「マックスが吹雪を嫌ってるかあ」
「マックスの言う事は三割方本気にしない方が身の為だけどな」
「風丸、ひでえ」
「だってそうだろ。俺らですらあいつが何考えてるかいまいち解らないとこあるし」
「ああ、まあなー」
「松野くんは、いつもあんな感じなの?」
「いつもと言うか、初対面の奴にはそうかな。気さくでいるようでいて、あんがい打ち解けるのに時間かかるよ」
「そうか? 俺はそうでもなかったけど」
「円堂の場合は第一印象がおもしろそう、だったからな。本人が言ってた」
裏を返せば、松野は自分がつまらない奴だと判断した人間はとことん興味を持たないという事だった。
「でも、マックスが初対面の奴にそんな事を言うなんてめずらしいな」
「そうなの?」
「マックスは………なんていうかな。人間関係というか対人関係に慎重だから、滅多に自分の気持ちをストレートに言う事がないんだ。好きでも嫌いでもな」
「そうなんだ……」
風丸の言葉を自分の頭の中で反芻するように、吹雪は目を閉じて思考を紡ごうとした。円堂も風丸もそれを見て二人ともあえて何も言わず、吹雪の出方を待った。ただ、円堂はすぐに飽きて手持ち無沙汰になったせいか、ベッドの空いたスペースに無理やり身体を押し込み風丸の背後から胴を抱え込むように抱きついた。要は構えという回りくどいボディランゲージというかパフォーマンスだが、風丸はそれは完全に無視して吹雪の顔を覗き込んでいた。
「…………つまり、嫌いって事は僕の事を何とも思ってないというわけではないんだよね?」
「……まぁ、そうなるな]
吹雪はしばらく考え込むように瞼を閉じていたが、不意に身体を起こした。急に起こした為、風丸は驚異的な反射神経で、吹雪の頭と正面衝突をしないよう上体を仰け反らせた。
「ありがと、風丸くん」
「マックスのとこに行くのか?」
「うん。松野くん、どこにいるか解るかな?」
「マックスなら染岡達と河川敷で練習してるんじゃないかな」
「わかった。ありがとう。……そろそろキャプテン相手にしてあげないと腐っちゃうよ」
「ああ……適当になんとかしとくよ」
吹雪はちらりと風丸の身体にまきついている円堂を見た。言われて風丸も横目で流し見した。吹雪が部屋を去ると今まで無言で風丸に抱きついていた円堂がむっくりと身体を起こした。
「えん、……うわ!」
身体を起こすそのままの動作で、風丸の身体を押し倒した。
「なんだよいきなり……」
「やぁっとふたりっきりになれた~」
「ああはいはい……よしよし」
満足そうに自分の懐に潜り込む円堂に、風丸は呆れながらも自分も幸福な時間を実感して円堂の頭を軽く叩いた。
作品名:八十一 作家名:アンクウ