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ハピハピバースデー!

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いつものように黒曜ビルで仕事に励んでいた骸は、執務室の扉の向こうから聞こえてくる声にふと視線を上げ、書類に走らせていたペンを置いた。
「───やあ」
がちゃり、とノックもせずに扉を開けて入ってきたのは、隣町を治めている生き別れていた幼馴染み。
「恭弥くん、いらっしゃい」
「仕事中だろうけど邪魔するよ」
「ええ、どうぞ。こっちはすぐに済みますから」
そう返して再び書類に視線を落としかけたが、恭弥に続けて入ってきた存在に目を瞠らせた。
「お邪魔しまーす」
ふわりと揺れる金茶色の長い髪と、琥珀色の瞳を持った少女。
「…姫君!」
「いいよ、お仕事続けてて」
思わず椅子から立ち上がろうとした骸を、綱吉は小さく首を振って制する。
「───へえ、骸がお仕事するところは、こんな造りになってるんだね」
「恭弥さまのお仕事場と似ているでしょう?」
最後に入ってきた凪の言葉に、綱吉がこくんと頷く。
「うん。でもにいさまのお仕事場は、もっと色が少ないよ。壷とかお皿は飾ってあるけど、ここみたいに明るい色の家具は置いてないから」
凪が勧めるままに応接用のソファに腰を下ろした綱吉は、物珍しげに執務室の中をきょろきょろと見回す。
彼女の隣に腰を下ろした恭弥は、長い足を組んで肩をすくめてみせた。
「僕は西洋骨董に興味がないからね。どちらかと言えば陶磁器や焼き物の方が見ていて飽きないし」
「確かに恭弥くんなら、ここに飾ってある洋燈や陶器人形といった西洋骨董よりは、焼き物や掛け軸といった東洋骨董の方がお似合いですね」
黒髪に黒い瞳を持つ恭弥なら、そちらの方が外見のイメージにも沿うだろう。
普段だって畳の部屋で着物を着て生活しているほどだから、なおさらだ。
対して骸は赤と蒼のオッドアイに藍色がかった髪。絵画のモデルにもなれそうなほどノーブルな顔立ちからみても、イメージとしては西洋のものに近いだろう。
「…まあ、恭弥くんも僕も、飾ってあるそれらを自分で買っている訳ではないという点では、同じですけど」
そう、すべては街の者からの寄付や貢ぎ物。
自分が懐を痛めて手にしたものではない。





「…そういえば、今日は何かあったんですか?遊びに来て頂くのはいつでも歓迎しますけど、姫君も一緒だと教えて頂けてたなら、千種達に言って何か用意させていたのに」
最後の書類にサインを入れた骸がそう言って首を傾げると、恭弥と凪がやっぱり、という表情を浮かべて顔を見合わせる。
「…ほらね、綱吉。忘れてたでしょ?」
「忘れてるって、何をですか?恭弥くん」
相変わらずきょとんとしている骸に、凪が微かに苦笑いを浮かべる。
「毎年こうなの、骸様って」
「なんですか、凪まで」
「ほんとだね。にいさまもそうだけど、骸も変わってないね」
くすくすと笑った綱吉は、手にしていた白い四角い箱をことんとテーブルの上に置いた。





「───ね、骸。今日は何の日か、憶えてる?」
「今日ですか?いえ、平日ですし、特に変わったことは…あ、確か黒曜デパートのカードポイントの積立が」
「骸様、積立が5倍になるのは毎月十日と二十五日です」
「…おや、違いましたか」
妙に庶民派な回答を寄越した骸に、凪がそっと訂正を入れる。
「では何の日ですか?さっぱり思いつきませんよ」
お手上げだと示しつつ3人の座るソファへ歩み寄ってきた骸に、綱吉が四角い箱の上部をぽすりと撫でる。
「今日は骸の誕生日だよ。今日で十九歳になるんでしょう?」
「───あ」
そう言われて初めて気づいた様子の骸に、もう、と綱吉が笑う。
「なんで自分の誕生日なのに、忘れちゃうのかなぁ」
「こればっかりは、何度言っても変わってくれないの」
「相変わらずだね、骸のそういうところ」
「…恭弥くんだって、自分の誕生日は『語呂合わせが良い日』とだけしか憶えてない癖に」
「そうやって憶えてるだけ、君よりマシだと思うけど?」
正確に記憶していないという観点から見れば五十歩百歩なのだが、今回は少々骸の方が分が悪い。
「だから昨日、凪が隼人の所へ来たんだよ。ケーキを焼くんだって言ってね」
「ああ、そうだったんですか…」
「武と隼人はいま、黒曜デパートに行ってるの。注文したプレゼント、受け取りに行って貰ってて。もうすぐここに来るわ」
「もしかして、ここのところ君が『内緒の買い物』と言って二人としょっちゅう出かけていたのは…プレゼントの下見ですか?」
「はい」
恭弥には並盛での仕事があったし、綱吉は諸事情であまり外を出歩かない方が良いから、フットワークの軽い3人が動いたのだ。