ハピハピバースデー!
☆
犬と千種の分の二切れだけを置いて、残りは6人で分ける。
「今日の主役だからな、ちょっとだけおまけだ」
「ありがとうございます」
コーヒーと一緒に、他の五人より少し大きめに切り分けられたケーキを隼人から受け取って、骸はやっぱり嬉しそうだ。
他は平等に分けて、それぞれの前にケーキとコーヒーが行き渡る。
「───それじゃあ改めて。骸、十九歳の誕生日おめでとう」
「ありがとうございます、姫君」
「また十一ヶ月だけ同い年だね」
「…僕の誕生日の度にそれ言うの止めませんか、恭弥くん」
「まあまあ、いいじゃん事実だし」
「それはそうですけどね、武」
「細かいこと気にするなって。髪のヘタの数変わるぞ?」
「なにげに失礼ですね、隼人。前々から僕のこれはファッションだと言っているでしょう」
「ほらまた、そうやって気にする…って、めでたい席でその話題は置いといて。ほら、凪」
隼人から言葉のバトンを受け取った凪が、一人がけの真向かいの席───図らずも『お誕生日席』だ───に座る骸を見て、ふわりと微笑む。
「…来年も、再来年も、その次もずっと。こうしてみんなで、骸様に『おめでとう』って言えるといいな」
「……そうですね。そうなることを、祈ります」
「骸、この場合は『そうしよう』って言えば良いんだよ」
言葉尻を取り上げて笑った恭弥に、骸はオッドアイを細める。
「ではこれからは、それぞれの誕生日をこうして祝えるようにしましょう」
「───生まれてきてくれて、ありがとう」
五人からの言祝ぎに、骸は微笑んで「ありがとうございます」、と返した。
作品名:ハピハピバースデー! 作家名:新澤やひろ