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悪あがき

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「……もうすぐ、誕生日だな…」
「…まだ、もう少し先だよ」

 俺の背中に腕を回して、クラウドは体を預けてくる。
 そんなクラウドの頭を撫でながら、プレゼントは…と問うてみたが、クラウドは首を振った。

「欲しいものは、セフィロスだけ。セフィロスの全てだよ。心も体も」
「…もう、お前のものだって言うのにな…」
「ごめん、でも、セフィロスの口から聞きたいから」

 クラウドの体を引き離して、じっと、瞳を見つめる。

「俺は…」

 クラウドは慌てたように、俺の唇に人差し指を当ててきた。

「ストップ! 今聞いたら、もったいない!」
「……でも、聞きたいんじゃないのか?」

 クラウドは大きく首を振って、否定した。

「頻繁に聞くと、ありがたみがないだろ。それに、俺は悪あがきしてるって言ったけど、それが嫌なわけじゃないんだ」

 よくわからないと言った態で首をかしげると、クラウドは軽く笑った。

「もし、本当に手に入ったと納得して、悪あがきしなくて済んでたら、俺、努力しないかもしれないからさ。今の方が、セフィロスにこっちを見ててもらおうって努力するから」
「そんな努力必要ないのに」
「とんでもない! 英雄セフィロスの隣にいるってのは、並大抵のことじゃないんだよ!」
「そんなに大層なもんじゃないさ…」
 クラウドの額に軽く口付けて、抱きしめる。


 俺が手に入れたいものが、クラウドだと知ったら、クラウドは笑って言うだろう。


「俺はセフィロスのものだよ」


 それでも不安になるのはクラウドと同じなのだ。

 だが、クラウドの言うとおり、自分を見ててもらうための悪あがきならば、してもかまわないか。

 次の誕生日も、その次の誕生日も、ことあるごとに、俺を欲してもらえるならば。
作品名:悪あがき 作家名:藤沢 尊