八月の観覧車
もう一度キスした。わたしたちは汗をかいている、と思った。地上に戻ったら、歩いて公園を出て、経一のバイクで家まで戻って、途中でケーキとチキンを取りに行って、サラダもパンもディップももうだいたい用意してあるから、帰ってもまだ夕食までには時間がある。シャワーを浴びて、もう一度お化粧して、いつもより少しだけお洒落して、乾杯、それから。
まだこんなに今日がある。とても久しぶりに、子供のころのように、一日は長いのだと感じた。
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――先生、わたしたち、この間みんなで観覧車に乗りに行ったんです。
――そうそ、ほんとはディズニー行きたかったんだけど、みんな金なくてさ、へへ。
――結構遠くて、暑くて大変でしたけど、でも楽しかったな。
――ああ、観覧車って、あの昔遊園地だったところの。
――遊園地?
――そうか、みんなはまだ小さかったから知らないかな。
いま公園になってるところ、あそこ、昔は遊園地だったんだよ。
さすがにディズニーランドみたいな豪華なのじゃないけどね、ジェットコースターとか、いろいろあって。
――へえ、先生、遊びに行ったりしてたの?
――いや、行ったことなかったな。いつか行こうなんて話はたまにしてたけど。
――そうなんですか、じゃあひょっとして、観覧車も乗ったことない?
――うん、たぶんないな。
――じゃあさ、今度先生も一緒に行こうよ。車出してよ。
――賛成!観覧車乗って公園でBBQしようぜ!
――それいい!9月に行きましょう、ね、先生。
――はは、じゃあ、レンタカー借りなくちゃね。
――みんな呼びましょう、みのり先生とかあの小柄なお姉さんとか、それから、先生のお友達の…、
ほら、このあいだ、助けてくれた人たち。
――…ああ、そうだ。そうだね。