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俺と貴方と自分の、とある人生の話

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声が震えていて、なんて情けないんだろうと思わず自分を恥じたが、それ以上に、こんなときでも慣れた手つきで誰かを引き寄せることができるだなんて、そういえば彼は「イギリス」なのだなと思い出されるようだった。イギリス。どんな顔をしているかなんて知りたくない。俺がこうして、知られたくないように、彼もきっと知られたくないに違いないのだ。だって俺が泣くと、いつも泣くに泣けないような、なんだかとても情けない顔をしていたのはずっと前のはなし。

ああこんな風に、いきなり優しくしてきたところで、彼は俺がなんで泣いているかなんてわかっちゃいないんだ。でも仕方ないんだ。彼は未だにコートひとつ脱いでない。余裕という二文字を、うまれたどこかに落としてきてしまったんだろう。ひさびさに流した涙は速度を緩めず当然のようにだらだらぼたぼたと流れ続けて、自慢のトレンチにいくつものしみがついてしまっていた。これぐらいは許してくれるかな。