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ロックンローラ小ネタ集 ※801

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あれは傑作だった、とマンブルスは言った。どう傑作だったんだ? ボブは先を促したが、思い出し笑いの発作に襲われたマンブルスは口を開いては吹き出し、を何度か繰り返したあげく一人で笑い転げた。そんなに可笑しかったのか。つられてニヤニヤ笑いながら尋ねると、長い付き合いだが奴のあんな顔は初めて見たね、盗撮しときゃしばらく強請れたぜと深く頷くもので、そりゃ惜しいことをした、とボブは半ば本気で言った。
「もっともだ」
 マンブルスがグラスに口をつけたので、ボブはさりげなく後ろに退いた。案の定彼はうっと呻いて目を剥き、胸をどんどん叩きながら、相当な努力をして飲み込んでいた。ようやく落ち着きを取り戻すと、
「唇噛みしめて震えてたぞ」こんなふうに、と大袈裟に真似てみせてから、くいと顎を左に向けた。「ほらそこの席だ。向かい合って座ってたんだ、俺たちは。打ち合わせをしていた。そしたらいきなり、『ボブを使いたくない』なんて言い出すもんだから」
「大分ショックを受けてたからな」
 ストリッパーもコールガールもいらない、お前がほしい。そう告げたら、ワンツーは冗談はよせよとばかりに鼻で笑った。冗談なんかではなかった。ボブが真剣に言っているのだと悟ると急ブレーキを踏んでひとしきりわめき、謝り、その後はご存じの通りだ。
「まさか翌日あっさり帰ってくるなんて思わなかったんだろうよ。俺だって夢にも思わなかった、今回ばかりは」
「だろうな」
「ついてたよ」
 ワンツー、と誰かが呼ぶ声がして、二人は揃って顔を上げた。当の御仁の登場だ。丸めた新聞を脇に抱えたワンツーは、まっすぐこちらのテーブルに向かってきた。
「ラッキーだったな」マンブルスは素早く含みのある視線を寄越した。「色んな意味で」
「色んな意味でな」
 ボブは目を細めて応じ、椅子をずらして彼の座る場所を空けた。妙な空気を感じ取ったのだろう、ワンツーは不機嫌そうに二人の顔を見比べ、むっつりと押し黙ったまま、それでもボブの隣に腰を下ろした。本当に気が進まないなら別の席に行けばいいのに、と俯いて笑みを噛み殺す。
「――ああそうだ」
 何か思い出したのか、マンブルスは立てた指をワンツーに向けたが、次の単語を言い終わらないうちに再び笑いの海に沈んだ。何だよ、とワンツーが言った。ボブはさあ、と肩を竦めてテーブルの下で臑を蹴飛ばした。
「……何なんだこのバカは」
 ワンツーは音を立てて新聞を広げた。本日のロンドンの天気、曇りのち雨。神か悪魔あるいは気象予報士がサボっているのか毎日同じ予報ばかりだ。一日三十分ぽっちの晴れ間じゃ何もかもが腐ってしまう。
「よっぽど愉快なことでもあったんだろ」
「違えねえな」
「クソったれ」マンブルスが大きく息を吸い込み、「手前ら二人、なかなか――」
 余計なことを言う前にもう一度蹴飛ばしてやった。