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きくちしげか
きくちしげか
novelistID. 8592
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道程。

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すこしはにかむと、照れ隠しで握っていた標識を上下に振った。もちろん臨也に向けて。
「ちょ、うわ!やめてよ!もう、静ちゃん不潔!触らないで!静ちゃん菌がうつるでしょ?!」
「黙れ童貞。うるさい、しねどうてい。」
帝人が低くうなった。臨也が固まると帝人は静雄の方に向き直った。表情が一変して澄んだ瞳で静雄を見た。
「その女性とお付き合いしたりしなかったんですか?」
「しようとしたさ。年上だし、すげえいい人だったし、優しかったし。こんな商売やめて俺と、って言ったんだけどよ。俺まだその時高校生だったし。」
「うんうん」
帝人がきらきらした目で静雄を見つめる。
「しかもさ、ある日行ったら、いなくなってたんだよ。」
「そんな・・・。」
急にしんみりとした空気が流れた。
「やめちまったらしい。どうやら、結婚してたらしいんだよな、その人。」
「ええっ!人妻だったんですか!」
静雄の告白に帝人の非日常ラブメーターがひっきりなしに振れる。
「ああ。なんかだんなに見つかっちまったらしくてよぉ・・・それっきり今だに会ったことねえ。」
「そうですか・・・」
静雄が片手でタバコを取り出すと、口にくわえた。
「どこかで幸せになってればいいんだけどな。」
帝人の目が少し潤んだ。
「初恋、とかだったんですか?」
「まあな。」
静雄は短く言って、タバコに火をつけた。
「な、なんダヨ・・・」
声のするほうを見ると、臨也が目にいっぱい涙を溜めて二人を見ていた。目からあふれた涙が頬を伝うとはっとした表情になり、手で目をこすった。
「感動とかしてないんだから!ついでに泣いてなんかないんだからね!!」
黒いコートの袖でもう一度顔を拭くと、目の周りが赤くなっていた。帝人はその臨也を冷めた目で見ながら聞いた。
「で、童貞臨也さん、用件はなんでしたっけ?」
臨也がぐっと喉を詰まらせた。ポケットに手を入れるとはっとしてポケットから手を出した。
「もっとロマンティックな童貞喪失を演出するまで、お預けなんだから!!!」
そう言って手に持っていた何かを静雄に投げつけそのまま走って行った。ぱさりと乾いた音がした。
「何ですか?それ?」
静雄に投げつけられたのは小さな袋が数個連なっていたものだった。。
「あ」
「あ」
静雄の手にぶら下がる連なった袋を二人で見つめる。
「最低ですね。童貞野郎は。」
帝人は小さく吐き捨てた。
「全くだ。童貞ノミ蟲が。」
静雄も小さく吐き捨てた。
静雄の手には「LOVE」と印刷されたコンドームが六個ぶら下がっていた。
「次会ったら、つぶす。」
「次会ったら、刺す。」

静雄のちょっと甘酸っぱい思い出話のおかげで、池袋につかの間の平穏が戻った。

「童貞ラブゥゥゥ!!!!!」
池袋の空に、愛の言葉が響き渡った。
作品名:道程。 作家名:きくちしげか