幸福のありか
そしてやっと、冒頭に戻る。
明け方まで死ぬほど好き放題された身体が痛みを伴うのは当たり前で、最低なことに、立ち上がることも出来ない。先ほど風呂に入るといって部屋を出たイタリアを恨みがましく見送った後、執念でベッドから這い出て鍵をかけてやったっきり、もう十分に身動きも取れなくなっていた。よって、本当に、鍵は空けられない。空ける必要もない。あのあとの行為から考えるに、イタリアは酒に酔っていたようなそぶりをみせていただけで、本当に酩酊しているわけでもなんでもなかったのだ。結局遊ばれたのだということを考えると、羞恥と怒りがない交ぜになってどうしようもない。
しかし一番許せないのは、まるでセオリー通り、結局最後まで本気で抵抗しなかった自分自身である。力の差など歴然で、簡単に振りほどけるはずの腕もまったくのけることはできなかった。その度に「こいつは病人」と頭の中で無理やり唱えてはいたが、それももうさすがに効力切れだろう。組み敷かれた時点で一発ぐらい殴っておけばよかった――半ば本気でそう考えながら、べそべそと相変わらず聞こえ続ける泣き声の方向に視線をやる。当分許してやろうとは思っていない。いないが…しかし。
「……イタリア」
「!! ドイツー!俺いま超全裸だよ!早く空けてええ〜〜」
「反省してるか?」
「してる!してるしてるよー!心からしてるから!というか、プロイセンが帰ってきたときに困るのはドイツだよお」
「……そうだな、当分はその格好でそこにいろ!」
「ええええええ!」
やはりこいつは反省させるしかないと、ドアとは反対側に寝返りを打ち、そっと目を閉じた。もういっそ兄さんにでも助けてもらえばいいとうっすら考えつつも、結局後で部屋に入れてやるであろう自分のことを考えて、げんなりとため息をついて、挙句、そっと苦笑した。
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幸福のありか