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合宿2日目、23時。

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「……なにやってるんだ?」
朝食を終えたテーブルで、なにやら有里と松原が一枚の紙を見つめ難しい顔をしている。
「ああ、村越さん……」
「なにがあったんスか?」
ついつい気になって見つめていると、視線に気づいたのか有里が顔を上げた。年頃の娘として今日も隙なく整えられた眉が、へにゃりと歪み困りきった顔をしている。言葉を少しばかり改めて尋ねた村越に、有里はうるうると子犬のように濡れた眼差しを上げる。
「あの、あのね」
また、達海が無理難題でも言い出したのか。昨日の罰練を思いだし、些か苦い顔をした村越の顔に、有里が怯えた表情を浮かべる。
「や、大丈夫だ。見せてもらっても?」
いけない、女性を怖がらせるのは本意ではない。意識して表情筋を緩ませると、有里と松原の間に置かれた紙を手にした。紙には選手たちの名前と手書きの数字がずらずらと並べられている。
「……これは?」
てっきり今日の練習のオーダー表だと思っていたが、どうやら違うらしい。そのリストの内、ぐるぐると鉛筆で丸を付けられている名前を見て、村越は小さく首を傾げた。
「宮野、と亀井」
なにがあったのか。取り立てて昨日の練習で不調があったようには見えなかったけれども。
「なにか体調に問題が?」
「いやいや、そうではなくね……でもこのままじゃあなァ」
意識して捨てているとは言え、ここ数年ですっかりと染み着いた背負い込み気質で記憶を掘り返していた村越に、向かいの席で有里と似たような顔をしていた松原が慌てて手を振り、リストの上部を指さした。そこには。
「吉田? ああ、」
ルイジ吉田。達海とはまた違った意味でETUの二人目の問題児。
彼の名前の後ろに書かれた番号と二人の番号が同じであることに気づき、村越は合点が行ったと頷いた。
「またアイツが」
「王子、男と相部屋が嫌だって亀井さんと宮野さんを追い出しちゃったの」
「追い出し……って!」
どれほどワガママを言えば気が済むのだ。ぎりぎりと眉間に皺を刻む村越を、ますます怯えた顔をして有里が見上げた。
「別に、施設的にはまだ空き部屋があるから二人には別の部屋に避難してもらってもいいんだけど」
「かと言って、王子だけの特例を認めるわけにも行かないし」
それはそうだろう。
これまで吉田の気まぐれな性格に同じチームメイトは随分と振り回されてきている。今のところは、彼の卓越した才能が周囲の黙認を生んではいるが、流石にフロントやコーチ陣が認めてしまえば余計な軋轢を生じさせるのが目に見えている。
「困ったなァ……」
心底困った風、揺れる声音でぽつんと呟く有里に 余計なことをするな、と自らに囁き掛ける声をスルーして、村越はうっかりと口を開いてしまう。
「それなら……」
作品名:合宿2日目、23時。 作家名:ネジ