はれんち
しかし旦那は即答がお気に召さなかったらしく、一瞬ぽかんとなってから猛然と食って掛かってきた。そんな顔するってことは了承してもらえると思ってたんですか。
「なぜだ!不自由はさせぬ!何も一歩も外に出るなと言っているわけでなし―――!!」
「俺様仕事もあるし無理だっつってんの!それに旦那のソレは自分の責任!他人を巻き込むんじゃないの!」
自分の責任、の辺りに詰まったか、う、と怯む。しかし勢いは止まらなかった。
それこそ立ち上がる勢いで。
「そうやって煙に巻くつもりか!おまえはいつもそうやって―――!」
「ちょ、旦那っ―――」
「ぬあっ―――!?」
裾踏んづけて、またも転んだ。
前のめりに。
つまりはそう、俺のほうに。
「どあああッ!?」
膝が曲がったまま立ち上がろうとしたためによろけて、体を支えようとして咄嗟に旦那が掴んだのは俺の肩。旦那の馬鹿力で掴まれた勢いのまま、俺は床に引き倒された。
押し倒されたのは初めてです。
じゃなくて。
至近距離で真っ赤な顔して、ってなんで旦那そんな顔してんの―――!
「さ、佐助」
「は、はい」
思わず応えたけど、近い。顔が近すぎる。
「・・・上司命令だ。違反したら、減給」
「・・・は、・・・はい・・・」
だからなんで、真っ赤な顔してんの、旦那。