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淡い淡い(ミーネ→ビュクセ)

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初めて意識しはじめたのはいつごろだったか。
意識なんてしなければいいのに、一度してしまうと止まらなくなってしまうものだ。




「ビュクセ」


その名を呼ぶと彼が振り向く。
当たり前だ、その名は彼のものであるのだから。

けれども、自分が名前を呼んだら振り向いてくれる、
ただそれだけのことでも苦しいくらいに嬉しかった。


「これ、次の任務」
「…了解」


歩み寄って書類を手渡す。
彼が、手が触れ合えるくらい近くにいる。
体温が感じられそうな至近距離に、酔ってしまいそう。

この書類を彼に届けるようにと言ってくれた上司に感謝した。


「実行は10日後。明後日にはここを発つわ。それまでに準備しておくように、ですって」
「了解」
「それと、今回はたぶん遠方からの狙撃が中心になると思う。基本的には貴方に頼ることになりそうだ、とも」
「了解」


先程から自分ばかりが喋って、彼は『了解』の2文字しか発していない。
それでも今日はいいほう。普段は頷くだけで何も言わないことだってある。
薄い唇が動き、低い声が鼓膜に心地よく響く度に、

― 私は彼に恋をしていると、更に強く認めざるを得なくなる。


仕事のことだけを考えねばならないのに、私は一体何を考えているのだろう。
口と頭が全くリンクしていなかった。


「…私は貴方の銃弾を、今回の任務に合わせてもう少し改良してみるわ。今のでは少し破壊力がありすぎるもの」
「………」
「それじゃあ隣の部屋にいるから、何かあったら呼んで頂戴」


私は全てを手短に、ゲシュッツからの伝言を伝えることができただろうか。
やましい感情を口に出したりしていなかっただろうか。
表情も口調も、彼の前で全て普段通りに演じきれただろうか。

扉を開いて、失礼するわね、と軽く一礼をする。
彼と同じ部屋に長く居たかったが、これ以上二人きりの空間でヘマをするくらいなら、今すぐにでも出て行きたかった。


「………、ミーネ」
「? …………っ!」


呼び止められて振り返って、呼び止められたことに心臓が跳ね上がった。
彼の低い声が私の名前を呼んだ。
私の名前を。

彼が、私の、名前を。


全身がかぁっと熱くなり、耳元まで赤くなったのを感じる。
今までも名前を呼ばれたことくらいあるというのに、私はたったこれだけのことで何をこんなに取り乱しているの!?