淡い淡い(ミーネ→ビュクセ)
とにかく彼の前では平常に普段通りにいなければいけないのに!
「…な…、なに?」
声が上ずったような気がしたが、平静を取り繕う。
彼は幸いにも、気付かないでいてくれた。
…或いは、気付かないふりをしてくれた。
彼は私の顔をまっすぐ見据え、背中を許した相手にしか見せない笑みを浮かべる。
心臓がぎゅうっと締め付けられる感覚がして、耐えられないくらいに痛かった。
「ありがとう」
「…………!」
銃の改良に対して感謝してくれているのか、任務の報告に感謝してくれているのか。
それは分からないけれど、私の顔から火が出たのは分かった。
「…しっ、失礼するわ!!」
慌てて扉を閉めて彼の視界から消えても、しばらくの間、心臓の鼓動も顔の熱さも変わらなかった。
― 私は、彼に恋をしている。
彼が私を呼んだその声を反芻して、たまらなく愛しく思った。
作品名:淡い淡い(ミーネ→ビュクセ) 作家名:krm