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夕焼け小焼け

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今日は火曜日、そしてここは学校の玄関。時間的にももうそろそろだな。
「おや、アーサーさんも今お帰りですか?」
 やって来たのは、アーサーと同じ学年の本田菊。クラスは違うが、ひょんなことから仲良くなり、それからはアーサーにとっての唯一気の置けない親友となった。
 いつもはお互い生徒会やら部活やらで忙しいが、火曜日だけはよく帰る時間が重なる。というより、火曜日は生徒会の集まりがないのでアーサーが菊が帰る時間に合わせてこっそり玄関で待っているというのが本当のところだ。
「お、おう。菊も今帰りか?奇遇だな!あ、あの……あのさぁ……」
「折角ですし、一緒に帰りませんか?」
「えっ!あ、あぁ……うん」
 そんなアーサーの反応を見て菊が柔らかく微笑んだ。
 本当に菊といると心が休まる。アーサーはそう思った。
 俺はと言えば、自分で言うのも悲しいが友達というものに本当に恵まれていない。生徒会でも一緒で家も近くなフランシスとは昔から知り合いだったが、いつも喧嘩ばかり。会えば殴り合いってな感じの関係で、お互いを友達だなんて思ったこともなかった。他の奴らもちょっと話したりはするが特別仲がいいわけでもない。しまいには、あんなにかわいかった弟にすら罵倒される日々。まったく、いったいどこであんなんになってしまったのやら。
「はぁ……」
 そんなことを考えていると、アーサーは自らの人付き合いの悪さにため息が出た。
「どうかしましたか?」
 隣にいた菊が心配そうにアーサーの顔を覗き込んできた。
「うわっ!」
 完全に自分の世界に入り込んでいたアーサーは、突然近くなった菊の顔に驚くと同時に、恥ずかしくなり顔を真っ赤にさせて変な声をあげてしまった。
「す、すみません。驚かせてしまいましたか?」
 菊はあたふたとして、アーサーに謝った。
「あっ、いや、違うんだ!ただ、その……か、顔が……近くて……」
 アーサーが菊の顔から視線をはずいしながら話した。といっても、後半は今にも消え入りそうな声だった。しかし、それもこの近距離ではしっかり菊の耳に届いていた。すると、それを聞いた菊の顔も、だんだんと赤くなっていく。
「えっ、あっ!す、すみません。あの、本当」
「い、いや、いいんだ!別に気にしてないし、そ、そんな菊が謝ることじゃない!」
作品名:夕焼け小焼け 作家名:ジミー