夕焼け小焼け
わたわたと二人でそんなことを言い合っていたが、恥ずかしくなりお互い顔を真っ赤にしたまま黙り込んでしまった。お互いの顔を見ることもできずに、二人が別れる道まで来てしまった。
せっかく菊と帰れるというのに、自分のせいで何もしゃべらずに帰るなんて。そんな後悔の念で、アーサーはこの空気に押しつぶされそうだった。
「あ、あの、私はこちらなので……それではまた明日」
菊は、そういうとそちらに向かって歩き始めた。アーサーは、自分の鞄を強く握りなおすと、歩く菊の背中に向かって声をかけた。
「な、なあ!これからもまた、一緒に帰ろうな!あっ、いや、別に菊がよければだけど……」
すると菊が少し驚いたようにアーサーに振り返った。アーサーはまた自分の頬が熱くなるのを感じながらも、今度は目をそむけずに菊の返答を待った。
菊は、少しの間驚いた顔のままアーサーを見つめたが、ふわりとほほ笑むと、
「はい。アーサーさんのご都合が合うようでしたら、いつでも誘ってください。お待ちしています」
と言って手を振り、自分の家路を駆けていった。菊が向こうを向く瞬間、菊の耳もまた、夕日とはまた別に赤くなっていることが見て取れた。
アーサーはしばらくその菊の後ろ姿を呆然と見送った後、嬉しい気持ちとちょっと恥ずかしいような気持の中、自らも自宅へと向かって歩き出した。また明日も、一緒に帰れるかな、と淡い期待を抱きながら。
END